2016年夏、ある週末の午後。地下鉄の出口を一歩出た私は、照りつける日差しに思わず目を細めました。汗をぬぐってコンビニに駆け込んだ私は、冷たいコーラとチョコレートやせんべいなどスナック菓子を買い込むと、雑居ビルのオフィスに向かったのです。今日から5回にわたって、第2回「いのち支える映画祭」で上映する作品を選ぶ、スタッフ試写会が始まります。

 

オフィスの一角には、すでにプロジェクターとスクリーン、いくつものDVDが用意されていました。これから毎回2〜4本の作品を観て、翌春(つまり今春)の映画祭の上映作品を決めていきます。またこの試写会のもうひとつの役割は、映画祭のコンセプトを決めることです。映画祭の大きな方向性は、もちろん「自殺対策への理解と促進」にあります。でも、第2回映画祭のより具体的なコンセプトは、上映作品を観ながらその表現を決めていくことになるのです。

 

試写会には、毎回4〜5名のボランティアスタッフが参加します。全メンバーが十数本の候補作すべてを観るのが原則です。メンバーそれぞれの都合もあり、全員がそろうことはありません。試写会に参加できないメンバーは、各自が各々作品をチェックします。そして、「良い点」「悪い点」「感想」などを、クラウド上のスプレッドシートに記述していき、最終的には何回かの会議を経て、2つの作品に絞られていくのです。

 

試写会自体が楽な作業ではありませんでした。検討した作品は十数作品、いずれも重いテーマの作品です。何作品も連続で観ていくのは、本当に辛いものがあります。加えて、慣れない映画の評価という作業をしていかなければなりません。試写会のあとは、重い荷物を背負って歩いてきたかのようにぐったりと疲れました。

 

評価基準には、いくつかの観点がありました。スプレッドシートに残る記録を見ていくと、リアリティ、俳優の演技、映画祭にふさわしいかどうか、などスタッフによって異なる観点を重視しているのがわかります。私が重視したのは、当事者たちの心理描写にリアリティが感じられること、映画祭の主旨にあっていること、救いや希望があること、他の作品との組み合わせで生きる作品であることなどです。特に、関係者に救いや希望が感じられる作品であってほしいと考えました。

 

そのようなスタッフの様々な観点が検討された結果、優れた候補作の中から、「十字架」「人生、ここにあり」の2作品が選ばれたのです。いずれも登場人物の現実がよく描かれている見事な作品だ、とみんなの意見が一致しました。また、作品の選定過程で、“「排除」と「包摂」”というコンセプトも明確になってきました。

 

この2作品と、トークを通じて、自殺対策が「他人ごとでなく、身近な課題である」ことを感じていただけたらと思います。すばらしい作品を選ぶことができ、映画祭に多くのみなさんをお迎えできるのをうれしく思っています。(高嶋成豪)

 

NPO法人ライフリンク映画祭実行委員会 スタッフ

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