【2010年夏~秋】

私たちは、親骨の本格的なデザインに入りました。最もコラーニの特徴が出る親骨のデザインに取り掛かる前に、先ず検討したのは全体の形状。形状にまつわる話題として、日本の扇子には大きく分けて二つのタイプがあることをご存知でしょうか。

 

ひとつは布を用いるもの、もうひとつは和紙を用いるもの。

 

多くの場合、布を貼った扇子はその厚みのために、先端の幅が広く全体的に四角くなっています。そして、京都で流通する扇子のおよそ8割が布の扇子だと言われています。一方で、残り2割の和紙を用いる昔ながらの扇子は、先端がすぼまって全体的に柔らかい曲線を描きます。日本の職人の専門技術と扇子用の特殊な和紙が必要なため、最近めっきり減っているということです。和紙を用いる国産扇子は、いわば「絶滅危惧種」なのです。

 

私は、日本古来から作られている和紙を用いる扇子の理想的なラインを捜すために、大阪の百貨店や京都の街の沢山のお店を巡って勉強しました。夏に販促物として頂いたものも学びの対象に含まれていました。

 

その中から、最も理想的な2本が残りました。それがこれらの扇子です。如何でしょうか?コラーニのラインとマッチする、非常に優しい曲線を描いています。

 

最も重要なポイントは一番外側の親骨で、なめらかな曲線を描きながらふっくら膨らんでいます。この部分は「矯(た)め」と呼ばれ、扇子の締まり具合を左右する、大切な要素であることを宮脇賣扇庵様より教わりました。

 

左側はいただき物のノベルティ用扇子です。写真は要部分に位置確認用のシールを貼ってしまっていますが、とても美しく仕立てられていると思います。扇骨は古来から伝わる25間(けん)のオーソドックスな仕様で、「かはほりあふぎ」はこちらの型をベースにすることにしました。

 

右側は茶道用の扇子で茶扇子といいます。中骨の数が少なく一般の扇子よりやや小ぶりで、扇ぐための道具ではありません。中骨が少ないのでこれ程のシェイプを実現できているのですが、私はとても美しいと感じました。この茶扇子の竹の親骨は非常に強く和紙を締め付けてぴったりと押さえ込んでいます。この「折りたたまれた和紙の反発を竹の親骨が押さえ込む」という扇子の基本構造は、後に私たちを悩ませることになります。

 

余談になりますが、茶扇子は京都の古書店で手に入れました。「古書店でなぜ扇子?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。京都の古書店はとてもユニークで、木版画は勿論、このような古道具を段ボールに無造作に入れて販売しているお店も多く、骨董品店と見紛う程に様々な古い物が置いています。京都を訪れたら是非お立ち寄りいただきたいと思います。

 

私はこれらの扇子のシェイプをベースにすることをコラーニ教授と相談し、さらに、かつてコラーニ教授がJALのためにデザインした美しい飛行機のラインの一部を親骨に取り入れることにしました。

 

 

このようにして、親骨の形のイメージがいよいよ定まってきました。

 

(つづく)

 

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