先週金曜日の夜に無事プロジェクトは達成し、今は次の目標3,500万円へ向けて、どうかご支援と応援を引き続きお願いできれば幸いです。残り4日、最終日まで全力で走りぬきますので、どうぞよろしくお願い致します。

 

本日は、人類学の研究者で「世界最古の釣り針」を発掘した、藤田祐樹先生へのインタビュー記事です。「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の所謂、証拠につながる研究をしています。「発掘調査する仕事」ってワクワクしませんか?今、藤田先生は「沖縄の旧石器時代」の発掘調査をしています。その仕事内容を聞いて来ました。

 

藤田祐樹、1974年生まれ。「形態人類学、旧石器時代の人類史、動物考古学、動物運動学」が研究領域。

 

「形態人類学、旧石器時代の人類史、動物考古学、動物運動学」多岐にわたる専門領域!

一 HPを拝見して、藤田先生の研究の専門領域が「形態人類学、旧石器時代の人類史、動物考古学、動物運動学」と、同じ分野に感じられないところもあるのですが、実際に一つではない、今の「発掘調査」以外の専門領域があるという理解でいいのでしょうか?

まず僕は、1974年生まれで、東京大学理学部生物学科人類学教室を卒業して、海部先生の後輩にあたります。2003年に博士号を取って、そのあと4年間はポスドクの研究員を東大の農学部でしていました。その2003年に取った学位に秘密があるというか…。

 

一 海部先生の後輩なんですね!そして、44歳、年齢に対して見た目がお若い…。

よく言われます。でも、3児の父で長男は高校2年生です。多分、こういう発掘とか自分の好きなことをやってるといつまでも歳をとらないんじゃないかな(笑)。遊びのような仕事をしているので。毎日、発掘が本当に楽しいです。

 

一 すみません、話を戻しましょう。何で今のお仕事に至ったか教えてください。

僕は子どもの頃から動物が好きだったんですね。漠然と大人になったら動物に関わる仕事がしたいと思ってたんですけど、例えば動物園の飼育員さんとかね。楽しそうだなって思ってたんです。

だけど、“牛とか馬とか経済性の動物は治せる病気でもお金がかかるなら直さない”って話を聞いてしまって、結構よく考えたら当たり前かもしれないけどショックで。僕は生き物を殺す可能性のある仕事はできないと思い始めて、東大の1、2年生の時に獣医の道を諦めました。

 

一 東大の獣医になれる路線に乗ってたのに、自ら降りたんですね。

その時は、あまり大きくは考えてなかったですね。それで理学部人類学で遺跡から出てきた動物の骨を研究している先生がいて、それは結構面白そうだなと思って。

 

一 動物は生きてなくてもよかったんですね。

生きてなくても!(笑)そのころ分子生物学が盛んになっていたんですが、自分は目で見えるレベルの研究がしてみたくて、人類学教室には、「猿の二足歩行」等を研究している先生がいて、そこで学ぼう!と行ったらば、ちょうど良いタイミングでその研究をお辞めになられて(笑)。

これからは「人間の赤ちゃんがどうやって二本足で歩けるか」をやるって。最初は「ハイハイ○○ちゃん、おいで〜」とかやってたんですけど、「これ僕のやりたかったことと違う」と思って。赤ちゃんは大好きなんだけど、動物をやりたい!

バードウォッチングが好きで現実逃避のために鳥を見ていた日々

それで、研究のことが嫌になると現実逃避でバードウォッチングしにサボってたんですけど、ある時、鳥が全部二本足で歩いていたことに気づいたんですよ。鳥って世の中に1万種くらいいるんですけど、鶴みたいに脚の長いのもいれば、鴨みたいに水かきのあるのもいるし、鳩みたいに首振って歩くのも、スズメみたいにぴょんぴょん歩くのもいる。

こんなに色んな歩き方をしている動物がいるのに、この二足歩行を知らずして、人類学者は(赤ちゃんも含めて)二足歩行を語れないんじゃないかって思ったんですね。で、最終的に学位を取ったのは「鳥の歩き方」なんですよ(笑)

 

一 そうそう!『ハトはなぜ首を振って歩くのか』 (岩波科学ライブラリー)っていう本を出版されていて。不思議に思っていました!それが動物運動学ですね。

そうなんです(笑)。「鳥で行こう!」って舞い上がっちゃって、4年間はポスドクの研究員を東大の農学部でやっていたんですけど、いざ就職しようと思ったら、“応募しては落とされ…”の繰り返しで、研究の幅を増やさなきゃと思って、「首振りだけじゃダメだ」と思って(笑)

 

一 それは、何となく確かになるほど…。

海部先生の指導教官のところに戻って、「実は今かくかくしかじか…」話をしたら「藤田くん姿を晦(くら)ましていたと思っていたらそんなことしていたの」って。ちょうど沖縄県立博物館で学芸員募集していることを教えてもらい、今に至ります。

その時に「そしたら鳥の研究とかできなくなるかもよ」って言われたけど、「(鳥は)辞めます」って(笑)。今は時間があったら発掘調査の「骨のクリーニングがしたい」って思うくらい、研究が好きです。

 

「発掘調査」ってワクワクする?!実はとっても地道な仕事

一 「発掘」と聞くと「ワクワク」する気持ちが湧いてきます。きっと子どもたちも同じなんじゃないかな、と。発掘する人たちの仕事をしりたいです。

今、発掘調査をしているのは、「沖縄県南城市のサキタリ洞遺跡」という場所で。一部はカフェになっているような洞窟です。実は、「航海プロジェクト」のオフィシャルサポーター「ガンガラーの谷」が運営している人気ツアーのスタート地点でもあります。

沖縄県南城市のサキタリ洞遺跡

一 少しイメージと違いました。こんなカフェの横で発掘作業しているんですね。

他の発掘現場では殆どないですね、珍しいですよ。駐車場もトイレも水道もあってコーヒーも楽しめる。たまに観光客の人たちから話しかけられるので、発掘しながら啓発・普及もしています。

 

一 どういった流れで発掘の調査が行われるのでしょうか。

今丁度発掘シーズンなんですけど、主に3人で発掘調査をしていて、大体1年のうち1ヶ月が現場での発掘期間で、残りの期間が博物館内で発掘したものの整理をしたりする時間です。例えば、掘ってきたものの土を落としたり、今まさにやっているのは、2014年に掘った人骨から泥を落として、壊れた部分を接着剤でくっつける作業。

カフェの片隅で発掘する(最深部は3万年前)

一 現場で発掘する期間より遥かに、その「整理」に時間をかけるんですね。

人骨以外にも細かい動物骨を、ネズミや蛇、カエルとかが入っているとか、分けていかなきゃいけない。動物だけじゃなくて、変わった石、石器の可能性のある石がないか。あと、掘り上げた土の中にも、現場で見落としていたような細かい…例えば、植物の種だったりですね。

2万年前の地層とかを、数mmとかのものを洞窟の暗い中でヘッドライトの明かりで掘っているわけですね。僕たちが見つけたいものは小さくて壊れやすいものもあるので「竹串」を使って探します。目をショボショボさせながら。それで土もまとわりついていたりすると、現場ではどうしても見落とす危険がある。僕らは全部土も持ち帰って、水洗いしているんですよ。0.5mmと3mmの網目を使い分けたザルでこして、細かいものを全部取り出して乾かして、それを分類して行くことをやっているんですね。

▲動画では、2万3千年前の地層を掘っています。主に出てくるのはカニの殻(特にハサミの部分)、カワニナ殻、カタツムリ殻、炭などで、たまにカエルや鳥やヘビやネズミなど小動物の骨が出てきます。さらに稀に貝製品や魚の骨が見つかります。

 

一 私、今のお話を聞いてこれまで「発掘って面白そう!して見たい!」って思っていましたけど、やっぱりできないと悟りました(笑)

ははははは(笑)決して一つ一つの作業は難しいことじゃないし、根気さえあれば誰でもできることなんですけど、とにかくべらぼうに時間がかかるんですよね。洗骨作業に関しても、2014年に掘ったものを今やっとできている状況なので。普通の遺跡だと出てきた土を全部洗うとかやんないんですよ。

 

一 もっと大きいものを探しているからですか?

というのもあるし、時間が勿体無いので、縄文時代の遺跡とかはものすごい数があって、大体どんなものが出てくるのかを予測ができるので、まあ、念のため一部の土だけ、全体の5%だけを土をふるうとか、そういうやり方を普通するんですけど。僕らの、時代はちょっと他に例のないような…

 

一 謎に満ちすぎていて。

そうそうそう、そうなんですよ。自分たちでも何が出てくるかわからないようなものを掘っているので。例えば、特に「2万年前の貝のビーズ」を見つけた時、それは日本では初めてのものだった。もうそろそろ10個位出ているのかな。これから土を全部洗って、15個位に増えたら嬉しいじゃないですか(笑)。

 

一 それだとネックレスとかになりそうですね。オシャレだったんですね!

う〜ん。そうですね、ネックレスか腕輪か。でも衣類に縫い込んだかもしれないし、どう身につけたかってのはわからないんです。

特別な儀式の時にだけ身につけたかとか、埋葬する時に特別に入れたとか、いろんな可能性が考えられる。僕自身は、3万年前の人たちがオシャレを楽しんでたらいいな〜と思ってるんですけど、なかなか証明するのって難しいんです。けど数がたくさん出てくると、日常的に使っていたと考えることも可能かもしれない。少なければ特別な時にだけ使っていた可能性の方があるとか。他に見落としないか、間違いないよう探して行くのが大事なんです。

 

小さな破片からや魚の骨から数万年前の人々の生活をイメージできる

一 「動物考古学」っていうのはどんなことをする学問なんでしょうか。

遺跡から動物の骨も出てくるじゃないですか。それを何の動物かっていうのを分けて、魚なのか猪なのか鹿なのかっていうのを分けて、じゃあそれは人間が食べたものか、そうじゃないものか、というのを考えるのが「動物考古学」です。

 

一 どうやって出て来た骨の一部から何の動物か判別してるんですか?

単純に、魚だったり、蛇だったり、トカゲだったり標本を集めて自分で、骨の形を覚えるんですよ。もちろん遺跡から出てくるものは欠片になっていたりするので、それで、標本と見比べて、「この部分とぴったり合う・合わない」とか、基本的には実物と見比べることですね。

 

堆積層を観察して測量図面を作る様子(現場のどこからどういう風に発掘されたかを知る。例えば、何と何がセットで出たとか。「焼けた土」が出てきたらそれは火を焚いた後かもしれない。“出方”も大事なので、できるだけそういったことを現地で調べて記録を取りたいんです)

一 食べカスなのか、ただの死骸なのかってどうやって見分けるんですか?

「焼けているかどうか」で僕らは判断しています。例えば、カタツムリの殻は全然焼け焦げてないんですよ。蟹とか魚の骨とかは、焼け焦げて出てくるので、焼け焦げてるって言っても、3〜5%くらいなんですけど。ということはやっぱり、焚き火の周りで食事をして、食べかすを焚き火の中に放り込んで、その時に焼け焦げるんじゃないかなって思うんですけどね。

 

一 なんだか、何万年前の人と時代を超えて繋がっているというか、「この場所で焚き火をしていたのか」と思うとなんだかタイムスリップしたような気持ちになります。

そうですね。例えば、1万3千年くらい前の石英でできた石器も見つかっているんですけど、それの破片が1mm程の大きさで出てくるんですよ。それは何を意味しているかと言うと、作って持ってきたのではなく、石器をそこで割って作っていたという情景が浮かんでくるわけです。

 

一 変な話、食べカスとか破片とか、当時の人にとってもきっとゴミみたいなものから「当時の生活」を探って行くわけですね。

 

世界最古の釣り針の発見!沖縄の旧石器人はグルメだった?!

一 「世界最古の釣り針の発見」のニュースを見ました。すごい発見ですね。

2万3千年前の地層を掘っていて、洞窟の暗がりでヘッドライトの明かりをうけ、虹色に光る一部の丸い部分が出てきたんです。掘り進めていくと一方の先端が尖っていて…。後から調べたら、魚の骨も既に見つかっていたので、「これは釣り針じゃないか」って。素材となった貝は、真珠層が発達して強度があり、大きさ的にはオオウナギを釣るための釣り針じゃないかなと推測しています

釣り針特有の“返し”がないので、自分自身でも最初は「アクセサリー」を疑ったんですけど、アクセサリーだったら先端をこんなに尖らせると危ないし、魚の骨も出てるので釣り針だろうと思っています。最近は、実際に自分で貝殻で釣り針を作って小6の次男と釣りをして実験しているんです。

これまでコイやオオウナギがかかりましたが、もう少しのところでバラシちゃいました。あと1回は、大きな鯉がかかって糸を切られちゃって。糸とか竿は現代のものを使っていますが、釣ることができれば、貝殻でも頑丈だし、返しがなくても釣り針って納得してもらえるかな。

 

藤田先生が発見した貝殻製の「世界最古の釣り針」

一 3万年前の人たち、ウナギとか食べてたんですね!

まさに。想像以上にグルメだったんですよ。釣り針と一緒に、オオウナギやブダイの骨が見つかるし、他にも巻き貝のカワニナ、高級食材の上海ガニの仲間といわれるモクズガニのハサミが約1万点も出土していて、食べてたんですよね。それで、モクズガニやカワニナを詳しく分析してみたら、カニは甲羅の幅が約8cmの大型ばかりを選んで、主に産卵を控えた“旬の秋”に食べてることもわかりました。一番美味しい時にばかり多く食べてるので、けっこう豊かな暮らしをしてたんじゃないかなと思っています。

 

沖縄の旧石器が熱い!これまでの想像を覆す文化を持つ人たちだった

一 「沖縄の旧石器時代が熱い!」という国立科学博物館の企画展のネーミングを考えたのは、藤田先生なんですよね。「熱い!」のはどんな点でしょう。

想像していなかったものが次々出ているということですね。沖縄は、僕らが色々発見するまで、港川人っていう有名な旧石器人骨が出ていたんですけど、彼らの使った道具とか石器とかそういうのが見つかっていなかった。人によっては「沖縄の旧石器時代は、人はいるけど文化はないぞ」とか、「漂流してきた人が偶然見つかっただけじゃないか」ともいわれているような状況だったんですね。

 

一 そんなふうに言われていたんですね。知りませんでした。

僕らがサキタリ洞を掘っていると、食べ物もあったし、文化もだんだん分かってきた。それが、今まで僕らが思っていた旧石器人と全然違ったんですね。例えば、旬の美味しいモクズガニを食べたり、魚を釣ったり、うなぎを食べたり。旧石器人って僕たちのイメージにあるのは例えば、漫画『日本の歴史』の1巻の最初のところが旧石器人なんですけど、槍持ってナウマンゾウを追いかけてるんですよ。

旧石器人の一般的なイメージ

一 そうですね、そういうイメージだったので驚きました。

僕自身、旧石器人はシカとかイノシシを狩猟していると思い込んでいました。でも沖縄の旧石器人は、釣り針を作り、うなぎを釣って、食べたわけですよ。予想外だったし、全然僕らと違わないじゃんって。日本の土壌って酸性が強いらしくて、石以外のものが溶けちゃうらしいんですよね。日本全体で1万箇所以上の旧石器時代の遺跡があると言われているんですけど、石器以外のものがほとんど見つからないんですよ。だけど沖縄の島々は石灰岩に覆われていて、土壌が弱アルカリ性。だから骨が溶けにくくて、動物の骨とか貝殻などが結構残っているので、そこは土地の強さだなと思います。

 

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」とリンクするもの

一 藤田先生も「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」メンバーの一人ですが、藤田先生の研究はどの部分でこのプロジェクトと関係してくるのでしょうか。

人類が沖縄に「漂流して来たか」「意図的にきたのか」が重要なポイントですよね。琉球列島に遺跡がたくさんあるんです。例えば、石垣島にも白保竿根田原遺跡があって、宮古島にもピンザアブ遺跡、沖縄本島にも山下第一洞穴遺跡、サキタリ洞、港川遺跡とか。徳之島にも二箇所くらい。奄美にもあるんですよね。

そういった島々に大体人のいた痕跡があるということは、偶然、石垣島に流れ着きました、はい次は宮古島にも流れ着きました、今度は沖縄本島にも……!って続いて行くということがあり得るのか。絶対にないとは言い切れないけど、確率としては低そうですよね。

人類が沖縄に「漂流して来たか」「意図的にきたのか」(写真はイメージ)

一 確かに。漂流しながらそれぞれの島に辿り着いて定住できる確率の方が低そうですね。

山下第一洞穴遺跡というところからは、子どもの骨が出てるんですよ、3万7千年前くらいの。僕らの調査しているサキタリ洞からも3万年前の子どもの首の骨が出ているんですね。5〜7歳くらいの子どもですよ。港川遺跡からは成人女性の人骨も発見されています。“海難”などが100%ないとは限りませんが、これだけ女性や子供が見つかるなら、家族で意図的に移住してきた可能性を考えるほうが自然じゃないかなと思います。

それに、サキタリ洞遺跡では3万年前から1万3千年前までモクズガニとカワニナは、継続的に出土していて、人類が生活を続けていた証拠になる。それは漂流では実現が難しいと思っています

繁殖し続けていたのでなければ、仮に絶滅したとしてもすぐに別の集団が住み着いているということなので、頻繁に沖縄に旧石器人が訪れていたことになりますよね。何れにせよ「意図的に」来ていると考えるほうが、うまく説明できると思いませんか

こういった遺跡の証拠からも、そしてこれだけ文化的な生活をしていた彼らですから、「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」においても、「意図的な」航海が行われたという仮説を十分支持できると思います。

 

一 最後に、藤田先生が作った動画『サキタリ洞むかしばなし エピローグ』をご覧ください!

▲興味がある方はYouTubeで『サキタリ洞むかしばなし 第2話』も検索してみてくださいね!

インタビュアー: 「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」 クラウドファンディング事務局・田島沙也加


◆略歴:藤田祐樹​

・2017-現在 国立科学博物館人類研究部 人類史研究グループ 研究員

・2007-2017 沖縄県立博物館・美術館 主任

・2003-2007 東京大学大学院農学生命科学研究科 博士研究員


 

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