【完結編】国立科学博物館「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」

【完結編】国立科学博物館「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」

支援総額

33,402,000

目標金額 30,000,000円

支援者
877人
募集終了日
2018年9月14日

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2018年09月12日 14:14

スパコンで過去から未来を予測する海流スペシャリスト:宮澤泰正

とうとう残り56時間となりました。68日間のクラウドファンディングもそろそろ終わりを迎えようとしております。ここまで一緒に走り続けていただいた皆さま、ありがとうございます。まだ、3,500万円のネクストゴールに向けて挑戦は続きますので、引き続き応援をよろしくお願いいたします。

 

本日は、“海流のスペシャリスト”と呼ばれ、約30年間も「黒潮」を始めとした海流について、スーパーコンピュータを使い、過去から未来までを常に再現し続ける科学者・宮澤泰正先生(海洋研究開発機構|JAMSTECにお話を聞いてきました。

 

1967年生まれ、長野出身。スパコン「地球シミュレータ」の前にて。

 

海流について予測し続けたキャリア30年の「海流スペシャリスト」

一 現在の「科学者」としてのお仕事をされる前の話を聞かせてください。

私もともと長野県で生まれまして。夏一回は新潟に海水浴に行くっていうぐらいで、あんまり海には接点なかったんですけれども。大学に入って数理工学を研究してまして。基本的に海には全く関係なかったんですけど。

卒業する時は何をするか迷っていたんですが、「シミュレーション」っていうキーワードに大学時代に興味が出てきまして。じゃあ就職したら、それをやろうかなという風に思ったんですね。対象はその時は別に何でも良かったんです。

 

 

一 「海流」にはいつ頃から興味を持たれたのでしょうか。

私が学生であった1988年に、NASAのハンセン博士がアメリカ上院の公聴会で、「化石燃料によって、地球の平均温度が上がっている」っていう警告を出したんですね。彼は地球温暖化の危険性を世界に示した最初の科学者となりました。それで、当時の就職先の会社で「地球温暖化」を解明するために何かこう“地球”をシミュレーションして、「どれぐらい温暖化するのかの予測をする事」に貢献しなきゃいけないと言う空気になった。

 

一 私が小・中学生の時(1990年代後半〜2000年代初め)は、今よりもっと温暖化について世間が話題にしていたような気がします。

そうだと思います。「地球温暖化」に関連して最初の頃やった仕事が、電力会社が発電所を建てるのに、海水を取って沸騰させて、その蒸気でタービンを回して、その力で発電する。その時に、そこの漁師さんらが「何故温かい水を発電所から流すんだ、どれくらい広がるんだ」といわれると。それで、温水が広がるシミュレーションをする仕事を。その時は発電所の目の前の狭い海に限られていたんですけど、結果として今もまだ、黒潮から地球全体まで、海のシミュレーションをずっとやり続けてます。

 

一 それ以降ずっと何年間ですか?

そうですね、30年くらいのキャリアになるわけですけれども。今は、ここ(海洋研究開発機構)で地球の海や空はどうなるかって言うことを、スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」で計算して予測しています。

 

地球シミュレータ。2002年3月に、世界に類をみない「人類的課題に挑戦できる世界最速のスパコン」として運用を開始。二度のシステム更新を行い、現在は三世代目の地球シミュレータとして運用している。

▲動画(注:大きな稼働音がします):広い体育館のような中に何台も置かれているスパコンの数々。動画のこの光が点滅するのはスパコンではなく同じ室内に設置してある「ストレージ(記憶装置)」。室内は、稼働する機器の大きな音がする。中は湿度、温度共に調整されており、涼しい。

 

 

「3万年前の黒潮」を予測するミッションとの出会い

一 「黒潮親潮ウォッチ(←クリックでサイトに移動します)」というサイトを運営していらっしゃいますね。

はい。サイトにも「黒潮大蛇行中」とありますが、時々、黒潮が大蛇行と言って大きく南に曲がったりするんですね。それこそ何十年もずっと謎だった。私たちに与えられたミッションというのは「黒潮の流路予測」などで、それで「黒潮のシミュレーション」をして、今、何ヶ月後、そしてもっと未来にどうなるかを研究しています。

 

一 そもそも宮澤先生のような科学者は、どんな作業をしているのか知りたいです。

まずは、スパコンで計算できるためのプログラム、コンピュータの命令文を作らなきゃいけないですね。Excelのマクロとかご存知ですか。イメージとしてそれの大きいものをコンピュータに送り込んでいる。……実はそれが今朝、1ヶ月くらいかけて書いたプログラムが消えてショックで…。今復旧作業をしてるんですけど(涙)。

 

実は1ヶ月かけて書いたプログラムを失って悲しい宮澤先生。

 

一 「黒潮」とその他の条件を数値にして命令文を作るわけですか。

何で黒潮ができるかとかそういう基礎的なことは一応わかってるんですね。だから「数式」にして表現することができる。数式をプログラムにして、コンピュータに食べさせて計算結果が出れば、“出したい黒潮”が出るんですよね。ある程度、流体力学等でなぜそうなるのか分かっているので。

 

一 「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」において黒潮を調べるようになったきっかけは何だったんでしょう。

国立科学博物館の地学研究部・久保田好美さんが愛媛大学の郭新宇先生と一緒に黒潮のシミュレーションをやっているグループがあって、既に3〜4年位前から「最終氷期最盛期(2万年前)の黒潮を知る」という内容で、私も加わって科研費で研究していたんですね。当時は、海部さんのプロジェクトと関係なく、偶然にも同じ頃に始まったんだと思います。それで久保田さんの紹介で是非加わって欲しいということで一緒になったんです。最初は「3万年前?え?」という感じだったんですけど(笑)。

 

一 メンバーの全員が同じことをやっているわけではないですよね。どのように解析を進めているのでしょう。

この研究では、郭先生とその学生さんたち、私が「海のシミュレーションモデル」を開発しています。東京大学の阿部彩子先生が地球全体の「古気候(こきこう:過去の気候)シミュレーションモデル」を開発しているので、そのモデルが計算する「大気の風や熱」の情報を使って、私たちの海のモデルを動かします。

 

 

「3万年前の黒潮」の正体はどうやって解き明かす?

一 「3万年前の黒潮」ですが、今はどのように研究を進めていますか。

まず、「気候がどうなっていたか」ってことですね。黒潮っていうのは「風」で動いているので、なぜ強くなるかっていうのは「地球の自転」と関係するんですけど。元々流れができる原因っていうのは、太平洋に風が吹いて海をかき回している。ですから、風がわからないと3万年前の黒潮もわからないです

 

一 なるほど。風も予測しなきゃいけないんですね。

今と昔が違うのは、「①風の強弱が今と違っている」。それと「②海水準が低い:80mくらい陸地が出ている」。氷河によって水が少なかったから。あとは、「③大気から与えられる熱の分布が今と違っている」。海水準が浅くて、風と熱の強弱が今と違っている。風と熱については、数値の不確定性がまだありますが。こういうことが昔の気候を調べたシミュレーションで分かってきました。今は最終氷期最盛期(2万年前)のことを明らかにしようとしていて、これからさらに「3万年前の黒潮」についてシミュレーションしようとしています。


 

難題ですよ、特に①③は。どれくらい弱くなるか、強くなるか、定量的なところ。数字、それがまさに科学の世界なんで非常に難しいですよ。そこをできるだけ確かなものにしていくのは科学者の仕事ですよ。

 

 

「3万年前」もの大昔を調べる価値とは何か

一 「3万年前の黒潮」を調べることによって現代に活かされることは何でしょう。

過去を再現できるってことは、色んな化石データもありますんで、自分の推定は正しかったかどうか検証できますよね。だけど、例えば「地球温暖化」に関しては完全に未来なので検証できないですよね。大事なのは、過去のことがちゃんと推定できた同じモデルを使えば、未来のことも予測できる証明になるんですねまあ、温暖化の予測に関しては人間社会がどう変わっていくかということも関係してきますが

瞬間値は予測できないですよ。過去であっても未来であっても。ただ平均的な状態というのは、黒潮がどう流れたとか、どれぐらい平均的に強かったか弱かったか、そういうことはですね、過去であっても未来であっても、それなりに推定できるんですね。

 

 

3万年前のことを正確に推定できれば、それと同じものを使って3万年後も予測できるそういうこと。だから昔のことを調べるのは必要なんです。過去のことを調べるのは、「未来のことを調べるために必要」なんですね。すなわち、過去のことをわざわざ何故調べるか、その理由は「未来を生きるために必要」だからです

 

 

「人間が黒潮とどう関係したか」を知りたい

一 「航海プロジェクト」において、宮澤先生が期待するものは何ですか。

我々は「アプリケーションラボ」という名前なんですけれども、海流とか気候変動の研究成果のアプリケーションをつくりだす、すなわち「社会に応用して行く目的」で設立されています。

 

 

海部さんのプロジェクトも、クラウドファンディングとか色々な専門の方や台湾の人々を巻き込んだりとか、社会的なイベントになってるじゃないですか。そういう社会が求めるもののアプリケーションとして、我々の知見も応用して行きたい

 

一 宮澤先生の科学者としての夢は何ですか。

「海流研究」って、海流そのものが何で存在するのかなとか、何で曲がるのかなとか、海流自体を調べるのが大事なんですけど。将来的に、一番大事なのはですね、海流が実際に海の生物にどういう影響を与えてるかを調べること。実は、あんまりよくわかってないんですね。

 

最終的には「海の生き物に対してどう影響を与えるか」を解明したい。これもある意味、「3年前の航海 徹底再現プロジェクト」っていうのも、「人間が黒潮とどう関係したか」ってことですよね

将来的には「生物と海流の関係」がかなり細かく分かるようにしたいというのが私の夢です。「海と生物」って言うのは「永遠の謎」科学者として調べていきたいな、という好奇心ですね

 

 

インタビュアー: 「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」 クラウドファンディング事務局・田島沙也加


◆プロフィール:宮澤 泰正(ミヤザワ ヤスマサ)​

・所属: (国研)海洋研究開発機構 アプリケーションラボ ラボ所長代理
・兼務:アプリケーションラボ 海洋・大気環境変動予測応用グループ グループリーダー
・キャリア:主任研究員


 

本プロジェクトへのご支援は以下から

 

 

 

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