動物園でのニホンライチョウの保全の取り組みについて
本プロジェクトは2018年から早くも3年が経過しました。皆様から多大なるご支援をいただきましたおかげで、この間、動物園での様々なニホンライチョウ(以下、ライチョウ)生息域外保全事業を継続し、新たな取り組みも始めることができました。ライチョウの飼育・繁殖技術の確立に向けて大いに事業が進展し、ここにあらためて皆様に感謝とお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
さて、私たち動物園の取り組みは最終目標として「ライチョウの明るい未来」を目指していますので、この3年間で確実に目標へ向かってきていますが、まだまだ道半ばの状況です。そこで、本プロジェクトでは一応の区切りとして、この3年間の取り組みと成果を中間報告というかたちでご報告いたします。なお、これまでの3年間、各年度の詳細な活動報告並びに収支決算報告につきましては、お手数ですが、以下のアドレスよりダウンロードしてご覧いただきたいと思います。
2018年度活動報告 https://toyama-familypark.jp/animal/act2018.pdf
2019年度活動報告 https://toyama-familypark.jp/animal/act2019.pdf
2020年度活動報告 https://toyama-familypark.jp/animal/act2020.pdf
収支決算報告 https://toyama-familypark.jp/animal/kessan.pdf
シンポジウム2019報告 https://toyama-familypark.jp/animal/sympo2019.pdf
これらについて簡単にまとめてご説明いたします。令和3年4月1日現在、ライチョウを飼育している動物園・施設は7か所で、全体で53羽を飼育しています。現在までに動物園ではライチョウを安定的に飼育することができるようになり、毎年、一定数のヒナが繁殖、成育させることができるようになってきました。動物園でのライチョウの飼育管理・飼育繁殖技術は確実に蓄積されてきています。しかし、母鳥自らが巣を作り、卵を産み、卵をあたため、雛を孵し、そして自らがヒナを育てるという自然繁殖がまだうまくいっておらず、産んだ卵の受精率や孵化率の向上にも課題が残っていて、引き続き技術開発に取り組んでいます。
さらに、環境省のライチョウ保護増殖事業計画では近年、野生復帰事業が始まり、動物園へも飼育下の個体の野生復帰を視野に入れた(野生復帰させることができる)飼育管理に取り組むことについて協力が求められてきています。具体的にはライチョウが野生下で採食している高山植物の成分を分析して、その代用となるライチョウ専用のエサの開発や、それらを消化吸収するための腸内の細菌を分析してライチョウに保有させることなどについての研究を始めています。特にこれらについては専門とするいくつかの大学と連携して研究を進めています。
また、ライチョウ保全に関する普及啓発として、動物園や国全体の取り組みを市民の皆さんに伝えていくためにシンポジウムの開催を計画し、2019年2月に「ライチョウの未来と動物園の役割」というテーマで富山市にて実施しました。その後も毎年、開催を計画していましたが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大防止のためにそれ以降の開催は断念せざるを得ませんでした。今後、状況が落ち着けばぜひ、再開したいと考えています。その一方で、2019年3月から動物園でライチョウの展示を始めることができました。このことはそれまでの動物園が飼育繁殖に取り組んできたことの成果の一つであり、来園者がライチョウの姿を目の前で観察できることにより、ライチョウを守ろう、そしてライチョウの暮らす自然を守ろうという意識を高めることにつなげることができたと考えています。
本プロジェクトでは皆様からご支援いただいたライチョウ基金はまだ、1,200万円近く残っております。今後、動物園では前述したように、飼育下個体の野生復帰に向けて具体的に取り組んでいくことになります。例えば、ライチョウ専用のエサの製造開発や、ライチョウ生息地での野生復帰調査や保護、観察への動物園職員の育成を兼ねた派遣などに基金を活用し、引き続きライチョウの保全に取り組んでいきたいと考えています。
今後もこのプロジェクトページの新着情報等を用いて、動物園の取り組みやライチョウ保全の状況を発信してまいりたいと思っています。皆様のご期待に沿えるよう、これからもがんばっていきますので、応援をよろしくお願いいたします。