支援総額
目標金額 3,000,000円
- 支援者
- 286人
- 募集終了日
- 2024年10月23日
ご寄稿をいただきました|大場正昭さま(新派文芸部)
さて本日は、昭和49年の劇団新派入団以来、劇作家・北條秀司のもとで数々の作品の演出に携わり、公私にわたり交流の深かった新派文芸部の大場正昭さんに、北條秀司氏との思い出についてご寄稿をいただきましたので、ご紹介いたします。
心に留まる半世紀
「北條秀司劇作史」のまえがき
大場正昭
昭和四十九年発刊されたこの本は、その年に劇団新派に入団した私にとって、演劇界の天皇と呼ばれた北條先生から頂いた最初の本だ。
あの時から半世紀。ブックエンドの端っこで、 金色 の布張りの表紙を光らせている。この大著の巻頭に書かれているまえがきを引用させて頂く。
老後のたのしみに保存してある切抜帖が数百冊書庫の棚を占領している。一つの作品が上演されるたびに、筋書や、舞台写真や、宣伝ビラや、新聞雑誌に出た劇評の類をペタペタと貼り込んである。芝居が再演される時、この切抜帖がたいへんな存在価値を持ち、稽古場でひっぱり凧になる。われながらよくこれだけのものが残されたと感心してみるが、最初からべつに計画したものではない。劇壇にとび出した頃は劇評を神の如く敬い、座右に置いて改作の資料にしようと、保存をはじめたわけである。(続く)
習作時代から始まった先生の切抜帖は戦時中も焼け残り、歌右衛門の「春日局」までを網羅した劇評大全として「北條秀司劇作史」は出版された。三宅周太郎、岡本綺堂、菊池寛、伊原青々園らの大家から、無名の好事家の意見まで二百六作品の劇評がずらっと掲載されている。
そして切抜帖作りはその後も、先生のお亡くなりになるまで美智留お嬢様とボランティアの人達で続けられ、すべて今度の松竹大谷図書館の「北條秀司スクラップブック保存プロジェクト」の原資料となっている。私も少しだけお手伝いさせて頂いたが、中には歌舞伎の大幹部さんの御内方からのお礼状や、作家同志のいさかいの通信もあって、眼にしていいものかハラハラした記憶もある。
この七千五百字もの長文で書かれた「北條秀司劇作史」まえがきに出会うまでの間、私は学生あがりの演劇をちょっとかじって、ちょっと石を投げて、逃げ帰って、反新劇の小劇場ブームにのみこまれそうになっていた。その時、たまたま出会ったのが、世に出る前のつかこうへいさん。丁度二十歳の頃、仮面舞台という慶応の学生さん中心の劇団で才気あふれるエチュードを組み立てるつかさんに、あっこれはかなわないなとあっさり思うことが出来た。そして風来坊生活が二年経った時、昔の新橋演舞場の楽屋口のとなりの頭取部屋で座付頭取さんにお茶を入れる仕事をしていた。新派文芸部に入団させていただいたのだ。そこで出会ったのがこの「まえがき」だった。
今でも時々読み返しているが、なるほど演劇は凡百に人間が 集 ってもなにも起こらない。一人の突出したひたむきな才能が動かす芸術なんだと結論づけてくれた。つかさん体験の数倍の思いで私を押した。この痛快な一文は、演劇にかかわろうとする人にその覚悟のあるやなしやを糺し、それはどの社会でも一緒じゃないかと問いかけている。数々の演劇人のエピソードも書かれている長文だが、なかでも新橋芸者とのゴーストップでのすれちがいざまの短かい会話は、この大作家の本質を見事に表わしている。どうぞ演劇人のみならず皆々様御一読を。
私は、北條氏の晩年の二十二年間、新派文芸部員としてだけでなく、先生 曰 く「外海」の仕事の手伝いもさせて頂いた。朝七時前に電話が鳴る。「大丈夫か?後にするか」「ええ、きのう夜ふかししたんでもう少しあとに」と、言えるわけはない。「ええ、もう大分まえに起きてます。どうぞ」一言一句聞きもらさぬよう黒電話をにぎりしめ「えゝ、はい、え?は、はい」メモをとるので精一杯の吐き出す声に妻はいつも「カゴ屋みたいね」と笑っていた。
話は三十分にも一時間近くにもなる事があった。にぎりしめた手と二の腕の関節が固まって、正常に戻るには同じ時間がかかった。黒マジックの太字で届く指示の葉書も、改めて数えたら百六十枚を越えていた。依頼の文言の 後 の赤字で書かれた不急の文字は、急げと言うことだとは、しばらくして知る事になった。「勞をねぎらう 感謝はせず」という直撃も五通ほど混っていた。
先生が亡くなられた時、日本演劇協会の会報で特集が組まれた。知らせを聞いた時の想いを一言と云われ、「北條秀司という人の頭の中で、さっきまで考えていたこと、今は何処でたゆたっているのやら、夢油断するべからず」と答えた。
私は昔から、北條氏こそ黙阿弥に並ぶ劇作家であり、純文学で言えば川端、芥川に伍する作家である、と何故誰も言わないんだろうと不思議に思っている。批評家を演劇の道を歩む良きライバルとして出発したこの作家の人生を、一冊の論評として描いたのは、私の知る限りでは関西の作家田辺明雄氏のそれだけである。
おしまいに、クラウドファンディングが成功します様、皆様の御協力をお願いします。
大場正昭さんから皆様におススメする北條秀司氏の代表的な著作3冊をご紹介いただきました。
・『わが歳月』日本放送出版協会 昭和56年(終戦までの自叙伝)
・『演劇太平記(一)~(六)』 毎日新聞社 昭和60年~平成3年(終戦からの自叙伝)
・『新派群像』 枻出版社 昭和51年
上記3冊に加え、『北條秀司劇作史』もブックトラック展示でお読みいただけますので、ぜひご覧ください!
なお10月京都南座では、北條秀司の代表作のひとつである『太夫さん』を、大場正昭さんが演出いたします。こちらもどうぞお楽しみに!
リターン
3,000円+システム利用料
A|【税控除対象】お気持ち応援コース(3千円)
■サンクスメール
■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
■報告書(2025年4月末に送信予定)
■寄付受領書・控除証明書(2025年1月末に発送予定)
- 申込数
- 80
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年4月
5,000円+システム利用料
B|北條秀司作品台本デザインオリジナル文庫本カバー
北條秀司作品『井伊大老』『浮舟』の台本の表紙をデザインに使用したオリジナル文庫本カバー(非売品) をお届けいたします。
■サンクスメール
■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
■報告書(2025年4月末に送信予定)
■北條秀司作品台本デザインオリジナル文庫本カバー
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※ 本コースへのご支援は税控除の対象となりませんのでご注意ください
- 申込数
- 55
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年4月
3,000円+システム利用料
A|【税控除対象】お気持ち応援コース(3千円)
■サンクスメール
■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
■報告書(2025年4月末に送信予定)
■寄付受領書・控除証明書(2025年1月末に発送予定)
- 申込数
- 80
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年4月
5,000円+システム利用料
B|北條秀司作品台本デザインオリジナル文庫本カバー
北條秀司作品『井伊大老』『浮舟』の台本の表紙をデザインに使用したオリジナル文庫本カバー(非売品) をお届けいたします。
■サンクスメール
■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
■報告書(2025年4月末に送信予定)
■北條秀司作品台本デザインオリジナル文庫本カバー
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※ 本コースへのご支援は税控除の対象となりませんのでご注意ください
- 申込数
- 55
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年4月