世界で一冊の手描き絵本『まる』を、沢山の人に読んでもらいたい

世界で一冊の手描き絵本『まる』を、沢山の人に読んでもらいたい

支援総額

2,025,000

目標金額 1,100,000円

支援者
235人
募集終了日
2020年11月5日

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2020年11月01日 22:52

まると私(9)「私の日本画」

「個性と生きる~アート編~展」会場にて
(オーエンス八千代市民ギャラリー主催、2019年7月26〜28日開催)

 

●遠い目標

トヨダから急な連絡があったのは、2019年の6月はじめのことでした。
私は『まる』の製本が出来上がったところで、間近に迫った「手づくり絵本の会」の展覧会に向けて忙しくしていました。
「八千代の市民ギャラリーのKさんにモンナのことを話したら、7月に障害者の方々の“個性と生きる~アート編~展”があり、その中でブースを区切って二人展みたいな形で参加しませんか、とのお誘いなんだけど。どうかしら?」
(私は、旧姓を門奈〈モンナ〉と言い、門奈裕子を画号にしていました。)


私は、2年近いリハビリを終え自宅に帰って来てから、いつか銀座で「門奈裕子個展」をしたいと思っていました。それは長いこと前から、やりたい・やらねばと思いながらなかなか実現できない遠い目標でした。
でも、個展をやる前にトヨダと二人展ができる。今まで描きためた作品を発表できる。願ってもない機会でした。ただ、引っかかることが、ひとつ……。

“障害者”の展覧会という点です。障害者だけれど、障害は関係ないと思いました。


トヨダも実は難病を抱えていました。「微小変化型ネフローゼ症候群」で再発を繰り返していました。指定難病認定だそうです。“個性と生きる展”には、入院時に描いたものをメインに出品するとのこと。
トヨダとは、高校のとき、美大受験の予備校で知り合いました。帰りの電車が同じ方向で、一緒に帰ったりしていました。一浪したものの、2人とも東京藝大の日本画科に進むことができました。


トヨダはどう思っているのだろう。
でも、トヨダと二人展ができる。展覧会をやりたいと思っていたのは私。展覧会ができるのなら、障害者云々は関係ないのではないか。やりたい展覧会をやらせてもらえるなんて、むしろしあわせだと考えました。

 

7月の展覧会はあっという間にやってきました。
当初私は、怪我をしてからの作品を10点から20点展示する予定でしたが、作品を選びに来たスタッフが、「どれも気持ちが入っていて選べない。みんな展示してしまいましょう」と言ってくれました。もちろん『まる』の絵本も。
オーエンス八千代市民ギャラリーはとても広くきれいで、バリアフリーでした。
そこに、大学のクラスメートはじめ、ずっと私を見守ってくれていた人たちが集まってきてくれたのです。千葉リハビリテーションセンターで同じ病室だった車椅子のSさん、所沢・国立障害者リハビリテーションセンターの頸損(けいそん)の仲間も来てくれました。
今まで応援してくれた人たちにお礼も言えて、自分で言うのもなんですが、とてもいい展覧会でした。

 

●日本画そして恩師・Y先生との出会い

私が日本画というものを知ったのは、小6のときでした。

そのときの担任は5年から同じ男の先生で、私と相性が悪かった。何かにつけて注意されることが多かった。
その頃の学校はつまらなかった。嫌なことが多かったです。

また、その頃は友達もいなくて、私は暗かった。とうとう髪の毛を抜くクセが止まらなくなったのです。
とても心配した母は、近くの絵画教室に行かないかと私を誘いました。そこは当時人気があり、順番待ちでした。私の妹は絵もうまく賞も取るような子で、その妹のためにとっていた席を、母は私に勧めたのです。


私も絵は好きでした。6年から習っても遅いのではと思いましたが、行ってみることにしました。Y先生との出会いでもありました。
行った初日に描いた絵は水彩画で、「ランプとりんご」でした。初めて“にじみ”を教わり、水彩絵具と水で描く表現が多様で美しく虜になりました。
アトリエの隣の部屋には、Y先生の描いた日本画の大きな山の木々の風景画が飾ってありました。その絵は迫力があり、絵具の色がとても繊細で感動的で、ずっと観ていても飽きません。描きかけの小さな作品がいつも立てかけてあり、出来上がって行く様子を観るのが楽しみでした。
担任も友達も相変わらずでしたが、気がついたら前より気にならなくなってい
ました。


中学に入り、部活が忙しくなってもY先生の教室はやめませんでした。
しかし学年が上がるとともに部活との両立が厳しくなり、憧れの岩(いわ)絵具を使った日本画を教わることはできませんでした。私より前から習っているお姉さんたちは、膠(にかわ)と岩絵具を使って花を描いていましたが、私は顔彩(がんさい)止まりでした(註)。
高校受験のとき、母に絵の道もあると聞かされて、私は迷わず大学は日本画を受験すると決めました。


1985年希望の大学に入ったものの、日本画は難しかった。
イライラが焦ったときには絵具を和紙にのせてもうまくのらなかったり、絵具と膠を混ぜながら心穏やかに対話していくと、うまくいったり。私はどうしたらあのY先生のような、秋野不矩(ふく)や東山魁夷(かいい)のように描けるのか……岩絵具と格闘する毎日でした。
粒の荒さの違いで色が微妙に美しく変わる絵具。思うように描けないときは、日本画を自分で決めた道ではないような気がして、心の隅で悩み続けていました。母が提案してくれた道、自分で探して決めたわけではないことに、どこかこだわっていました。

 

●日本画教室を始めたものの
大学卒業後、水彩画を月島の子どもの絵画教室や、大人を初めて教えた渋谷区の日曜日のアトリエ教室で、そして自宅でも教えるようになると、楽しくて、もう日本画を描かなくてもいいかと思ったことがありました。
するとある日、日曜日のアトリエ教室の一番年上の女性の受講生が、「私が
使っていた岩絵具をもらってください」と言って来られたのです。「私はもう年で、岩絵具を使った作品は描けないから……」と。
その女性はかつて趣味で日本画を描いていたのです。
断れない私は、その方のお宅まで出向いて、たくさんの絵具をいただいて帰りました。
「まいったなー。描かないといけないなーー」。
私は小さく呟きました。まもなくしてその方は、高齢のため教室もお辞めになりました。
最初に教室を立ち上げた頃からの方でしたので、辞めてからもなんとなく気にかけていたのですが、そのうちに風の噂で亡くなったと聞きました。
「ああ、これはいよいよ描かねばならぬということだ」とひしと感じました。


私は自宅の教室で、ママ友で一番古株の生徒数人を相手に日本画を教えることにしました。絵具は自分が買っていたもの、日曜日のアトリエ教室の女性から贈られたもの、さらには他の知り合いからもいただいていたので、たっぷりありました。皆で自由に使って描きました。

最初は、長年描いていなかったので、自分も一緒にやる余裕がありません。しかし、そうとばかり言ってもいられなくなり、ブランクを埋めるつもりで、こわごわと岩絵具に触っていきました。


2016年秋に久しぶりに1枚の絵を完成させました。森の中から天を仰ぎ木々を望んだ、私が大好きな構図の絵です。
次は何を描こう。
私は教室の皆を海に連れて行きました。その場でデッサンはできなかったけれど、そのときの写真をもとに次の作品を描こうと考えていました。2016年12月のことです。最後の日本画の教室になりました。

 

「想像の入口」

 

●「想像の入口」に立つ

私にはまだやり残していることがあります。日本画を再び描くことと、門奈裕子の個展をすること、です。
それに向き合うのは決して易しいことではありません。むしろ険しい壁のような登り坂です。登りかけては落ち、登っては落ちの繰り返しです。
あきらめるのは簡単でしたが、私はあきらめずにいました。


私の原点に、あのY先生の山の絵があるのです。日本画の絵具に魅せられたあの日々がある限り、苦しくてもこの道を歩むしかないのかもしれません。
でも、その苦労を前に立ちすくんでいる自分がいます。それはちょっと自分に甘い私と、勇気のない私がいるからです。

怪我する前、日本画の最後の教室で描いた、あの森の絵、「想像の入口」。
今となっては、何を想ってこの題名にしたのか、すっかり忘れてしまいました。


もしかすると、「想像」は「創造」としたかったのかもしれません。
あるいは、いつまでも日本画の入口でうろうろしている自分を叱咤し、勇気を出して、想像の翼を広げていけ! ということだったのかもし
れません。
そうして、森の中から大空へ抜け出したとき……
私も、優雅に日本画を描いているのかな?


註 日本画は岩絵具(色のある鉱石を砕いてつくった砂状のもの)を水と膠で固定するので、それが乾くまで作品を水平に置くスペースが必要で、描くときの姿勢もある程度限られる。また、絵具を一色ずつ溶いた皿を置く場所も必要になる。
 

リターン

3,000


お気持ちコース

お気持ちコース

■サンクスメール

■自分で印刷できる「まる」のオリジナル電子ポストカード(1枚)

支援者
12人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

5,000


絵本『まる』+名入れ

絵本『まる』+名入れ

■出版された『まる』1冊をお送りいたします。

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
95人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

6,000


絵本『まる』+オリジナルポストカード(5枚) +名入れ

絵本『まる』+オリジナルポストカード(5枚) +名入れ

■描き下ろし2枚を含めた、オリジナルポストカード(5枚)

+
---------
■出版された『まる』1冊

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
74人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

10,000


出版お祝いコース

出版お祝いコース

■サンクスメール

■自分で印刷できる「まる」のオリジナル電子ポストカード(1枚)

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
46人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

30,000


出版お祝いコース

出版お祝いコース

■サンクスメール

■自分で印刷できる「まる」のオリジナル電子ポストカード(1枚)

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
7人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

50,000


出版お祝いコース

出版お祝いコース

■サンクスメール

■自分で印刷できる「まる」のオリジナル電子ポストカード(1枚)

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
7人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

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