プロジェクト概要

 

少女が手にしているのは日本から届けた絵本『ぶどう畑のアオさん』です。
©Yoshifumi Kawabata

 

タイとミャンマーの国境。ここには9ヵ所の難民キャンプが点在し、10万人が暮らしています。多くは、戦闘を逃れて長い間山の中を歩き、やっとの思いでキャンプにたどり着きました。

 

命の安全は守られている一方で、キャンプ内にはさまざまな制約があります。

 

まず、移動の自由。キャンプの出入り口周辺には検問があり、特別な許可がない限り、中から出ることは許されません。学校も病院もキャンプ内にあり、配給される食料を食べながら、毎日を過ごしています。キャンプ内では就労の機会が限られており、何もすることがない大人も多くいます。

 

そして、情報へのアクセス。インターネットなどを使って情報を自由に得られるわけではなく、目にするもの、知ることができる情報はわずかです。

 

キャンプができて34年。ここで生まれ育った子どもも多く、今や人口の50%は18歳以下です。彼らにとっては、本当に、「キャンプの中が世界の全て」なのです。

 

私たちの活動は、そこに、ひとつの窓を開け放つこと。

 

そう信じて、18年間、図書館の運営を支援してきました。

 

©江藤孝治(ネツゲン)

 

難民キャンプでは、図書館が、文字通り「唯一の情報源」です。子どもたちは絵本を通して、キャンプにはいない動物のこと、世界には海というものがあること、トンネルがあること、他の国がある、そして“夢をもつ”ということを知ります。

 

学校の先生になりたい。

お医者さんになりたい。

いまは移動の自由も、進学の自由もないけれど、いつか。

 

こんな未来もありえるのだと、外にはいろんな世界が広がっているのだと、それを「知っている」ことが、彼らが「信じて生きていく」拠り所になります。

 

そんな図書館という場所を、これからも続けていくために、お力を貸していただけませんか。

 

図書館で子どもたちは絵本のページをめくり、
様々な「窓」を開いていきます。
©Yoshifumi Kawabata

 

国際社会から見放されつつある、難民キャンプ。

 

シャンティ国際ボランティア会の、菊池礼乃(きくち あやの)です。タイとミャンマーの国境の町、メーソットに赴任して7年が経ちます。

 

この地の難民キャンプの始まりは、1984年。70年前から続くミャンマー政府軍と少数民族軍の紛争により、多くの難民が国境を越えてタイへ逃れてきました。戦闘の激化などを理由に難民はその後も増え続け、2011年にはキャンプの人口は15万人を超えました。

 

幸い、2011年からミャンマー本国は民主化、全土停戦へと舵を切り、それは難民に「帰還」という希望をもたらしました。とはいえ現実には、ミャンマーでは未だに局地的な戦闘が絶えず、また多くの難民にとっては帰還先の土地の見通しも立たず……。現在も、10万人がキャンプで暮らし続けています。

 

山の斜面に建つ仮住宅。
戦争は過去ではなく、今もまだ心の傷は癒されぬままに、
閉塞感の中で暮らしています。
©Yoshifumi Kawabata

 

しかし、やはりミャンマーは「もう民主化したから大丈夫」という印象が強く、国際社会からの難民キャンプへの支援は減少の一途をたどっています。食糧配給も、医療も、教育も、目に見えて削減されています。

 

キャンプでの暮らしは日に日に厳しくなっていく。でも本国に帰ったところで保障はない。みな行き場のない苦悩を抱え、それは傷害事件や麻薬の使用、うつ病、自殺者の数が増えるなど、負の形で顕在化しています。

 

下の子の世話をしながら図書館に通う少女
©Yoshifumi Kawabata

 

「図書館には自由に行っていいよ」。それが支えになった。

 

ある時、難民キャンプでノーポーエクラちゃんという14歳の女の子と出会いました。彼女が語ってくれたことを、私は今も忘れられません。

 

私は、ミャンマーで生まれました。両親はミャンマーの田舎の村で小さな畑を作って生活していました。しかし、ビルマ軍との戦いから逃れるため、両親は生まれて間もない私を抱きかかえ、タイにある難民キャンプにたどり着いたそうです。

 

私が暮らすキャンプには、現在は3.5万人が暮らしています。端から端まで歩くと半日はかかるそうですが、小さい時からお母さんには家から遠く離れてはいけないと言われているので、近所の友達の家と学校以外、キャンプの中を歩いたことはありませんでした。

 

13歳の時、中学校で新しくできた友だちに誘われて、初めて図書館に行きました。それまで、図書館がどこにあるのか、どういう場所なのかも知りませんでしたが、入った瞬間驚きました。これまで見たこともないような本がたくさんあったのです。

 

ノーポーエクラちゃん、自宅にて
©Yoshifumi Kawabata

 

その日、家に帰ってお母さんに図書館の話をしました。私のお母さんは家が貧しかったので、小学校3年生までしか学校に通うことができず、今も私たちの母語(カレン語)も読めません。家でお母さんが何かを書いているところも見たことがないので、たぶん書くこともできないと思います。それでも、お母さんは学校以外に「図書館には自由に行っていいよ」と言ってくれました。

 

それから私は毎日のように図書館に通っています。本を読むと、私が見たことがない物のこと、人のこと、キャンプでは絶対に触れられないことも、同じような気持ちで経験でき、知ることができます。

 

もしもキャンプに図書館がなければ、私は何も知らずに育っていたと思います。

 

静かに本を読むだけでなく。ストレスを忘れて笑いあえる、優しい居場所。

 

私たちは、7ヵ所の難民キャンプで、18年間図書館運営を支援してきました。各図書館には、絵本、学習参考書、ニュース、雑誌、一般教養書含め、約1万冊の蔵書があり、子どもから大人まで、学習や情報収集、娯楽など、さまざまな目的で利用されています。

 

図書館にある子ども向けの絵本は、私たちが現場で出版した民話絵本や創作絵本に加え、日本の絵本やタイの絵本にカレン語、ビルマ語の翻訳シールを貼り付けたものがあります。また、青年、大人向けの本(学習参考書、新聞、雑誌、一般教養書など)は、ミャンマー国内から購入して、配架しています。

 

よく図書館に来てくれるおばあちゃんです。
本を読んだり、他の利用者さんとお話ししたり。
©Yoshifumi Kawabata

 

そして、図書館は単に本の貸し借りをする場だけではありません。地域の情報センターとしての役割も担っており、図書館前に設置した掲示板やパソコン(ネットには繋がっていません)を通して、ミャンマー国内の情報の提供を行っています。

 

さらに、図書館員が、毎日子どもたちへの読み聞かせを行ったり、キャンプ内の青年たちが組織する「図書館青年ボランティア」が図書館から遠い地域で読書クラブを開催したり、本へのアクセスの拡充に努めています。

 

私(菊池)も、キャンプの人たちが図書館を運営していけるようにサポートしています。
©Yoshifumi Kawabata

 

もちろん、本を読んだり情報を得たりといった明確な目的はなくても、ただおしゃべりしに図書館を訪れる人もいます。

 

年齢、民族、性別を問わずに、心を通わせ、互いに励ましあい笑いあう、優しい居場所。普段溜め込んだストレスも、図書館に来ると和らぐ。そう言ってくれる人も多いのです。

 

「図書館は無くなりませんよね?」キャンプに暮らす人々の願いに応えつづけたい。

 

しかしながら現実は厳しく、慢性的な緊急状態が続く国境で、各国からの支援も見放されつつある中では、図書館を運営する資金は足りていません。日々多くの人たちが利用する図書館は傷みも激しく、床に複数の穴が開いている状況ですが、場所を維持することすら難しくなっています。

 

難民キャンプの人々からは、「図書館は無くなりませんよね?」と何度も聞かれます。

 

苦しい状況ではありますが、それでも私たちは、この図書館を続けていくことが彼らにとって必要なことだと思っています。

 

キャンプで暮らすみんなが不安を抱える今だからこそ、
図書館で出会う本が励みになり、希望になると信じています。
©Yoshifumi Kawabata

 

帰還先の土地や家を用意するといった直接的な「支援」とは違う形ですが、絵本のおはなしは子どもたちの心の中で生き続け、人生の様々な場面で彼らを励ますと信じているからです。

 

子どもたちが、この先歩む長い人生の中で、自分の思いを封じ込め、夢を抱けない状況を仕方ないと思ってほしくありません。

 

子どもたちが抱く夢を、夢を抱くことを、この図書館で支えたい。そして、ミャンマーに本当に平和が訪れ、帰還できる日まで寄り添い続けたいと強く願っています。

 

これからも継続して運営していくためには、皆さまのご支援が必要です。どうか、ご協力よろしくお願いいたします。

 

「安心できる場所をつくる」、「人を育てる」、「本を読む機会を提供する」
シャンティ国際ボランティア会の活動の3本柱です。
©Yoshifumi Kawabata

 

いただいた資金の使途について

 

今回のクラウドファンディングでいただいた資金は、以下に使わせていただきます。

- 図書館の修繕費用

- 図書館で使用する資材費 (床に敷くマット、直射日光を避けるカバーなど)

- 図書館員のスキルアップ研修費用

- 図書館の運営費用

 

制約のあるキャンプで暮らす子どもたちが、
図書館という場所から大きな夢を描けることを祈っています。
©Yoshifumi Kawabata

 


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