「ドシンッ」「ドシンッ」・・・突然玄関が荒々しく開き、大きな足音をたてて鬼がホールに入ってくる。金棒を床にバシンバシンと打ちつけ、辺りをギロリギロリと睨みまわしながら、少しずつ近づいてくる・・・。朝市センター保育園の節分の会はこうして幕を開ける・・・。

 

 「ギャー」「ワーアーッ」、いっせいに悲鳴が上がり子どもたちはホール後方へと転がるように引き下がる。ついに、本物の鬼が現れた!やっぱりやって来た!ひいらぎの葉っぱもイワシの頭もちゃんと飾ったのに・・・。

 

 ホールはたちまち阿鼻叫喚の嵐。鬼の手がニューと伸びて誰かの足をつかむ。「連れて行かれる?!」涙を飛ばしながら必死で豆を投げる年長児たち。いくつかの豆が鬼の顔に命中。すると鬼がぐらりとよろめいたように見えた。「何とかなるかもしれない」と豆に力がこもる・・・そんな一進一退を繰り返し、ホールが豆の海になったころ、鬼はようやく来た道を帰っていく・・・肩で息をしながら・・・。

 

 本当に鬼は山に帰って行ったのだろうかと、屋上まで駆け上がり自分の目で確かめるそらのこさん(4.5歳児)たち。まだ保育士にしがみついて団子状態になっているどろんこさん(1歳児)たち。

 

 ・・・こうして、日常の平穏をひっくり返す激しい衝撃が徐々に鎮まり、節分の豆まきはゆっくりと幕を下ろす。

 

 保育園の昔からの伝統で、節分の鬼を豆で追い払わなければ春がやってこないことになっている。何とかこの日を無事に乗り越えたい一心で、鬼のお面や角、虎皮模様のパンツなどを作り、豆まきのリハーサルを何回も繰り返す。保育園一丸となって節分の鬼と向き合う。「本当みたいな嘘っこ」の世界を真剣に演出し味わいつくすのが保育園の節分。

 

 自分の中の「いじわる鬼」や「よわむし鬼」も一緒に退治できたかな?などと大人は道徳的な効果を期待するが、子どもたちにとっては、仲間や大人たちと立ち向かい保育園から鬼を追い払ったというドラマこそがすべて!!「そらのこさんたちが、豆を投げて鬼をやっつけたんだよね!」と、小さい子は目の前で繰り広げられたドラマを尊敬と憧れを持って思い返し、噛みしめている。こうして、よどんだ空気を破り鬼を払った保育園は、すがすがしく立春を迎えるのだ。

 

 (注)なお、毎年保育園にやってくる鬼の正体については保育園のトップシークレット!職員以外は知ることができません。本当に山からやってくると信じられています。これも、大人のお話と言うことでお願いします。

 

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