公益財団法人日本自然保護協会のサシバの保全のための取り組み（越冬地）

日本自然保護協会では、サシバ繁殖地・中継地・越冬地を保全する活動を地域団体と連携しながら推進しています。サシバの生息環境は人とのかかわりが強いため、サシバが生息する生物多様性豊かな自然環境の保全と再生が、地域の産業や暮らしの質の向上や再生に繋がると考えています。

沖縄県宮古島市では、宮古野鳥の会と宮古島市を中心に、地元小中学校、民間企業と連携して取り組みを進めています。宮古島市は、日本最大のサシバの渡り中継地として知られています。地元の「宮古野鳥の会」は1972年から50年間、二十四節気の「寒露」の頃（10月8日〜23日頃）に、宮古島市伊良部島に飛来するサシバのカウント調査を続けています。

宮古島に飛来するサシバのほぼすべてが日本国内で繁殖した個体と考えられることから、この調査は、日本のサシバの個体数指標として重要な位置づけにあります。しかし、飛来数は50年間減少し続けており、これを下げ止め、回復傾向にしていくためには、繁殖地・中継地・越冬地がそれぞれ生息地保全を進める必要があります。

久貝勝盛さんからの報告にもあったように、宮古島市ではかつてはサシバの密猟が行われて来ましたが、長年の保護活動により現在は無くなりました。一方で、生息地保全においては、宮古島市の森林率は減少し続けており、残された森林や緑地も、ギンネムに覆われている場所が少なくありません。サシバの中継地としても、越冬地としても残された森林を保全し、その質を高めていくことが求められています。

そこで、「国際サシバサミット宮古島2021」の開催準備をはじめた2018年頃からサシバの森づくりを開始しています。宮古野鳥の会、宮古島市、結の橋学園、三菱地所株式会社等と連携して、森林の再生を開始しています。2019 年には約 0.5ha をサシバの森に指定し、2022 年からは新たに約 0.1ha について、ギンネムに覆われていた場所にテリハボクやリュウキュウマツを植栽して再生を進めています。コロナ禍の影響で活動が停滞していましたが、今後、多くの方の協力を得ながら更に進めて行きたいと考えています。