お早うございます。松竹大谷図書館の武藤です。

 

紙資料修復工房さんに送って頂きました、【音貞アルバム】の処置の過程に撮影された写真と作業の進捗状況のご報告について、今週2月12日の新着情報に続いて第5弾をお知らせいたします。

 

前回までのレポートはこちら

その1 その2 その3 その4

 

今回は「脱酸性化処置」後のpHについてと、保存容器への収納についてのご報告を送っていただきました。そして今回、お待ちかね!いよいよ当館まで【音貞アルバム】が納品されたのですが、まずはご報告記事からご覧ください!

 

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さて、脱酸性化処置後のpHはpH7.0前後となりました。

 

脱酸性化処置前
脱酸性化処置後
脱酸性化処置前
脱酸性化処置後

 

本来ならば、7.5~8.0を完了値としますが、今回は、アルカリにより可変する可能性のある写真や手書きのブルーブラックインク、彩色のある資料が多く貼付されていますので、今回の処置では、水性脱酸性化処置のみでpH7.0まで引き上げて完了としました。非水性脱酸性化処置で表面のpHをさらに上げる方法もありますが、写真や色材などアルカリに弱い資料が複数台紙に貼付されているため、粉体である非水性脱酸性化処置のアルカリ物質の移行が気がかりです。そのため敢えて追加処置としての非水性脱酸性化処置を行いませんでした。

 

今後、数十年後にまた紙の劣化が見られるようであれば、次に修復する人に判断をゆだねることとなります。一人の人が永久保存の完全な処置を目指すのではなく、オリジナルを可変させないことを優先して、最小限の介入処置をすることで出来得る限りの延命を図り、また新たな時代には新しい処置方法があるのかもしれないので、次の時代に引き継ぐことが大切です。

 

また今回は再製本も行わないため、アルバムの表紙も同様に、今後再製本に使われる可能性がありますので、今回、糊を使う処置をせず、そのままスリーブ式の中性紙保存容器へ収納し、解体されたままの台紙全体は積層させ収納をしますが、写真資料と接する箇所には、写真の保護のためノンバッファー紙(アルカリ物質が含まれない)を合紙として挿入します。

 

表紙を収納するスリーブ箱
スリーブ箱の外観
写真の保護のためノンバッファー紙を合紙として挟む
表紙を収納したスリーブ箱と台紙を重ねたところ

 

積層した台紙と、布装丁の表紙を入れたスリーブ形式の箱を重ね、散逸しないように一つの保存容器に同梱します。

表紙と本文を同梱した箱

 

保存容器にはアーカイブの長期保存に適した中性紙で、特種東海製紙㈱製アーカイバルボードを使用し資料同寸に作成しました。合紙は同社製ピュアガードを使用しています。

 

全ての工程を保存修復処置報告書に記載し、御納品と共に提出をします。

 

 

以上、紙資料修復工房さんからのご報告でした。

 

そして、おまたせいたしました! いよいよアルバムが納品されてまいりました!

搬出の時とは、また違った風呂敷で運ばれてきた【音貞アルバム】。

 

 

 

保存箱の角が傷まないように、厚めの梱包に包まれていました

 

 

上の段には、アルバムの台紙と、保存用のアーカイバルボード(厚紙)が交互に積まれています

 

処置前のアルバムの台紙

 

処置後の台紙

綴じの金具が外され、切れを補修し破れを補填、フラットニングで平らになりピンとしています。

 

写真の貼られた台紙には、写真の保護のため合紙が挟んであります

 

 

台紙の下には、アルバムに挟んであった写真が上から合紙、写真、アーカイバルボードの順に収められています

 

そして、一番下には、表紙を収納するスリーブ箱があり、台紙と表紙を一緒に保存出来るようになっています。

 

 

今回、アルバムの表紙は処置をせず、そのままスリーブ式の中性紙保存容器へ収納しています。台紙を外した事で、少しは負荷が軽くなったでしょうか。いつか再生本する時まで、しばらく休んでいてもらおうと思います。

 

また、紙資料修復工房さんから「保存修復処置報告書」を頂きましたので、こちらも是非ご覧ください!

 

今回補修して頂いた【音貞アルバム】の特徴は、新聞や雑誌の切り抜き、写真、直筆の手紙や葉書、ガリ版刷の印刷物、と様々な資料が貼り込まれている所にあります。特に写真やインクはアルカリに弱いため、今回の補修では、長い間に酸性に傾いてしまった資料を、水性脱酸性化処置のみで、中性の値(ph7.0)でバランスが取れるよう、少しずつ処置を進めて頂いて、絶妙な調整をして頂きました。非常に手間の掛かる作業であったと思いますが、今【音貞アルバム】は負荷の無い自然な状態で、保存箱に収まっています。フラットニングで、歪みや折れも伸ばして頂きましたが、元に戻ろうとする性質があるそうですので、しばらくは保存箱にきっちりと収めておきます。

 

さて、いよいよ次はデジタル撮影です!

3月にデジタル撮影が始まりましたら、また折々ご報告致します!

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