「オルカラボアシスタントになるまで!」

 

 

私は福井県勝山市という田舎に生まれ育ちました。
スキージャム勝山と恐竜博物館が有名なところです。

 

空気と水がきれいで自然に囲まれた場所です。
果てしなく広がる田んぼ、おいしいわき水。水がおいしいので野菜をはじめとする食べものがとても美味です。

 

 


そしてよく野生動物に遭遇できます。
野山を散歩すればうさぎさんやタヌキ、イノシシが飛び出るし、学校の校庭ではキジが羽を休めていたり。

クマさんもしょっちゅう出没します。
学校の校門にも来たりするので登校も命がけですね。

 


プロジェクト本文にも書いてありますが、こんな山に生まれ育った私が小さいころから好きだったもの…それはラジオのプロ野球ナイター中継でした。現在でも民放が2局しかない福井県では、テレビで阪神戦の中継なんてめったになかったのです!

(そもそも、なんで阪神ファンになったのかは現在でも不明です。親も友達も別に野球好きではないので、きっと幼心に燃える何かがあったんでしょうね。真弓選手のファンでした)

 

選手のポジションも球種も事細かに分かれている野球はアナウンサーの実況だけでもほとんどの状況を推測する事ができます。

しかしラジオは遠い大阪から流れてくるので音もハッキリしません。なので雑音のなか一生懸命何が起こっているかを知ろうとしました。
そうやってラジオを聞きながらひたすらスコアをとっていました。
まさかこの青春時代の「雑音の中で音を聞き取る」訓練が、後に役に立つなんて思いもしませんでした!!

 


スポーツ記者になりたかった私は大学へ進みましたが、そこで自分の考えが甘かったことを思い知らされます。進路を聞かれて野球記者になりたいですと答えた私は教授に笑われたのです。
「新聞記者なんてそんな簡単になれませんよ〜w」と。

 

当時の私は教授のその言葉で「大学という場所は紙の知識を詰め込む場所で、いろんなことが起こっている現場からはほど遠いのだ」と感じ、こんなところにいても夢は叶わない、とにかく現場近くに行かなければ!と思いました。

そして「スポーツ紙といえばウマだ。ウマの現場からスポーツライターになろう!」とほんとに安易な考えで動物系の専門学校に進路変更してしまったのです。
(良い子はマネしないで下さい)

もともと動物が好きだったし、専門学校だと知識をつめこむだけでなく現場に出ることも多かったのでここでの勉強は楽しかったです。

 


牧場で馬や牛の世話をしたり、教室では犬猫、小鳥やは虫類、魚を飼育しており、大動物からペット全般について学んでいました。
そこで自分と他の人との認識の違いに気づいたのです。


わたし→動物は山に住んでいる、タイミングが良ければ見られるもの
他の人→動物は施設にいる、お金を出してふれあうもの


わたしにとって動物はそのへんに住んでるものなんですけれど、他の人にとってはペットだったり動物園の動物だったり、人間の手が関わっているものが動物だったのです。
あれ?と思いました。でも最終的にはスポーツ記者目指してたので、動物への認識の違いはまあいいやと思って学校にはただ楽しく通っていました。


スポーツ紙が目標なので「少しでも現場を感じなくては!」と競馬場でバイトしたりもしていました。PR係でしたけどメディアの取材なんかに触れられて「ふむふむ!」と勝手にお勉強した気分になっていました。

 


その専門学校には数多くの海外研修旅行がありました。
自由参加型で、行っても行かなくても良かったのですが、みんな思い出作りのために在学中に1回は海外旅行に行こうという雰囲気でした。

そしてたまたまわたしが選んだのがオルカラボ1週間滞在ツアーだったのです。今考えるとどうしてそんな凄いツアーが専門学校に?という感じですね。

 

そしてもちろん私が数あるツアーの中からこのツアーを選んだきっかけは

 


「鯱(シャチ)」

 

 

この文字を見た時に、あっ、虎という文字が入っている!!と嬉しくなったことでした。
まだ若くあたまも悪く安易な考えしかできなかった私は「海の虎(シャチ)と陸の虎(阪神)両方の虎を極めよう!」とか何とか寒いことを言ってカナダへ飛んだのでした。

しかしその研修旅行で衝撃の出会いをしてしまうことになります。

 

 


引率の先生ひとりに学生15人の一行はホエールウォッチングボートでハンソン島へ向かいました。
私は動物は好きですが、動物園や水族館がそんなに好きだったわけじゃない(なんか不自然だから。ただの田舎者目線ですので関係者の方いたらごめんなさい…)のでそれまでシャチは見た事がなかったんです。


なのでそれが初めてのシャチとの遭遇でした。そしてそのシャチはたまたま、ジョンストン海峡で最大級のオスのシャチだったのです。

 


 

こんなに大きな動物がほんとに海に住んでいるんだ…!!と驚愕しました。

ボートの脇にたまたま息継ぎにあがってその巨体はほんとに迫力があって、ブホーーッ!という潮吹きの音も空気が震えるくらいでっかくて、ちょっと恐怖も感じるくらいでした。笑


でもここの動物が自分の認識通り「その土地に住んでいて、タイミングが良ければ見られる」というもので嬉しかったです。
そうそう、これが動物!と思っていました。

 


そしてドキドキしながらオルカラボ到着。
すると、島のあちこちに設置してあるスピーカーからなんとも美しい音が聞こえて来たのです。


博士が現れて、こう言いました。
「さっき君たちが見て来たシャチの声だよ」

 

あんなに大きな動物から、こんな声が!?

 

水中マイクの音が拾うのはシャチの声だけではありません。
巨大な豪華客船のエンジンノイズ、モーターボートの音、タグボートの音…自然がいっぱいのカナダでも、ボートがある限り海の中はなかなか静かにならず、シャチの鳴き声もはっきり聞こえるタイミングは少ないのです。

 

しかし逆にそれが私の脳裏に青春時代を思い起こさせました。
遠い大阪から流れてくる雑音の多いラジオのナイター中継。その中から今何が起こっているか聞き取ったときの喜び。
それを思い出しながら水中マイクの音を聴きひと晩過ごしました。
ボートの音が遠ざかって行って、シャチの鳴き声がクリアに聞こえたときの喜び。

 

 


私これがやりたい!!

 

 

 

わたし「ここで働かせて下さい!」
博士「英語ができないと難しいね…」

 

その後も2回オルカラボに足を運んで断られたので、専門学校卒業と同時にカナダに1年間留学しました。高校のときは英語赤点ばかりのダメ学生だっのですが、やりたいことがあると伸びるもので、1年後にはオルカラボで働くだけの英語力はなんとか身に付いていました。


計3回断られているのですが「ここで働く」と決めたのであきらめる選択肢は存在しませんでした。なんとしつこい。貯金もぜんぶなくなったので、もしここでダメだったらどうするつもりだったんでしょうね。

いま考えると恐ろしいです。

 


そして英語が話せるようになって4回目
わたし「ここで働かせて下さい!」
博士「…仕方ない(苦笑い)、来年からおいで」

 


実は私が断られ続けていた理由は、日本人がアシスタントになるときは必須の「OSS-オルカラボ・サポート・ソサエティ」という日本の団体の面接を受けていないからだったのです(英語をよく理解していなかったものでわかりませんでした)。


しかしそんな失礼なことをしていたにも関わらず、私のあまりものしつこさに博士が半ばあきらめ、特例で面接なしでアシスタントになることができました…今でもこのときのことを考えると申し訳ない気持ちでいっぱいです。


※もしこの先ボランティアアシスタントを目指したい日本の方がいらしたら、必ず正規ルートであるOSSに連絡をして下さい。でないと4回もカナダに通うはめになります
http://www001.upp.so-net.ne.jp/OSS/

 


念願のオルカラボアシスタントになりましたが私はシャチの素人、同期の外国人アシスタントは多くが卒論を書きに夏休みを利用して来ている海洋系の大学生です。
知識では全くかないませんから、追いつけ追い越せの精神でそれはもう死にものぐるいで勉強しました。英語の資料を手に、想像を絶するくらい勉強しました。


人間だれでもやればできるものなんです!!
私はたいして頭もよくないのですが、本気の本気で勉強した結果、2年目にはもうほとんどの群れの鳴き声の区別がつくようになっていました。

 

水中マイクの音を聴くと、ボートの音の中から聞き取りにくいシャチの鳴き声が聞こえます。でも小中学生のときからラジオで知らず知らずのうちにノイズの中の音を聞き取る練習しまくっていた私にはお手のものです。


必死に聞き取ります。
音の向こうで何が起こっているか、音をたよりに脳裏に描きます。

 

ボートの音が遠ざかり美しいシャチの鳴き声が聞こえて来た瞬間に勝る感動は、阪神の優勝くらいしかないと思います。

 

 

人生って何が起こるかわかりません

みなさんにもびっくりするような転機が訪れるかもしれませんよ!

 

 

 


朝焼けとイシイルカ。


(文と写真・Tomoko)

新着情報一覧へ