●オルカラボのあるハンソン島は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の西海岸本土とバンクーバー島の間にある島々のひとつで、縦3キロ横8キロくらいの小さな島です。


 

 


島から見える朝焼けは素晴らしいです。
毎日違う空の色。


 

 

なんか沖がバシャバシャしているかな〜と思って良く見ると、数千頭のカマイルカが横切ってたり…

 

 

 

目の前のさまざまな光景から目が離せない、とってもきれいな島なんです!

 

 

夏はたくさんのサーモンが生まれた川をめざしてハンソン島周辺にやってきます。
そしてそのサーモンを食べにレジデント(前回の新着情報を参照してください)のシャチが集まってきます。

 


このシャチたちの楽園に研究所を作ったのが、我らがポール・スポング博士。


 

まんなかのお二人がポール・スポング博士と、ご夫人のヘレナさんです。ヘレナさんはシャチの鳴き声の聞き分けの神様とも呼ばれていて、どんな声でも聞き分けてしまいます!

 


●オルカラボができるまで

実は、ポール・スポング博士はもとからシャチの研究者だったわけではないんです。
最初は脳みその博士でした。
仕事を探してカナダにやってきた博士は、バンクーバー水族館でシャチの脳みその働きを調べるというお仕事を得て、スカナちゃんという名前のシャチの担当になりました。それが、博士とシャチとの出会いでした。

 

シャチの脳みそは人間の4倍の大きさがあります。
ただ大きいだけでなく、しわも複雑に入り組んでいます。
博士は「この動物はなんのために野生下でこんな大きな脳みそを持つ必要があるんだろう?」と思い、興味を持ちました。そしていろいろなテストをしていくなかで、シャチの頭の良さに心を奪われていったのです。


びっくりしたのはあるゲームをしていた時でした。それまでずっと100%正解だったものが、突然100%不正解になったのです。

 

 

他の動物ならばやりたくないことはやりませんが、スカナちゃんは正解率をゼロにすることで「もうやりたくない」と訴えていたのです。


博士はあれこれ試し、最終的に音楽を聴かせることでスカナちゃんのご機嫌をとることができました。
そこでポールは「シャチは音を聴くことでイキイキとする。そして水族館のプールにいるシャチは音に飢えている」ということを知ったのです。


こういったことが重なって「狭いプールの中でなく本来の生息環境なら、スカナはどれだけの能力を発揮できるだろう?」と博士は考えるようになりました。
そしてスカナを何とか海へ帰せないか水族館に頼みましたが、それはもちろん無理な話でした。

 

スカナは水族館で亡くなりました。

博士は「水族館ではシャチに負担を強いた研究しかできなかったから、つぎは自然なままの姿のシャチの研究がしたい」と考えました。
そして、スカナの遺骨を持ってたどり着いた先が野生シャチの楽園・ハンソン島でした。

 

 

友人たちに手伝ってもらって博士は自力で研究所を建てました。
発電機を使ったり、風力発電したりと試行錯誤しましたが、現在はソーラーパネルで研究に必要な電力をまかなっています。


●オルカラボでの研究方法

島のまわりにいくつかの水中マイクを沈めています。
シャチには家族ごとに方言がありますので、「どの水中マイクから、どの家族の方言が聞こえるか」というデータを取り続けることで、ボートで追いかけ回す必要なく陸にいながらにしてシャチの行動を音で追うことができま
す!!

 

 

水中マイクのエリアも少しずつ重なっていますし、広いエリアの音を拾うマイクでも「バンクーバー島がわか、クレイクロフト島がわか」「マイクに近づいているか、マイクから遠ざかっているか」で全て聞こえる音が違いますので、慣れてくると「いつ方向を変えたか」など、かなり正確なデータをとることができます。

オルカラボには365日40年分のデータがあって、このデータはビクトリア大学の協力により他の研究者や海洋系の学生のためのデータライブラリとして使われています。
新しく研究を始めたい人がボートでシャチを追っかけ回して海を汚しながらデータをとらなくても、マイクひとつでデータを集めているオルカラボの40年分のデータを図書館の資料のように使えるのです。

オルカラボでは望遠鏡や双眼鏡で個体識別をしたり、写真や映像をとったりするのも全て陸からです。
なので、シャチへの負担はとても少ない研究所といえます。
(まあ、水中マイクで彼らの声を盗聴してはいるわけですが!!笑)


こういった研究所で私が15年任されているのは、シャチの方言分析なんです。
シャチはお母さんが群れのリーダーで、透明度の低い海で家族が迷子にならないように「自分が誰か示す」方言をそれぞれの家族ごとに持っているのですが、これまた世代交代したり、流行があったりと、いちどコンピューターにおぼえさせれば良いというものではなく時代によってころころ変わってゆくものなのです。

例えば今から30年前のAという家族の録音を聴くと、Aの家族であることはわかるものの、どこかしら古くさいんです。最近流行の鳴き声も使われてなくてへんな感じです。
なので常に情報もアップデートしていかなければなりません!

この鳴き声の分析をしていたおかげで助けられた命のエピソード(ご存知のかたもいらっしゃいますね、そうですスプリンガーちゃんの話です)もあるんですが、その話はまた次の機会に☆

 


どーーーーーーん


 

(文と写真とイラスト by Tomoko )

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