今シーズンのボランティアワークを終えて無事に帰国いたしました。
今年もシャチをはじめとするたくさんの野生動物・自然に囲まれて素晴らしい経験ができました。それと同時にいろいろ考えさせられるシーズンでもありました。

 

 

 


7月半ばにジョンストン海峡にやってきたシャチたちは、9月17日に海峡を去るまで毎日私たちの水中マイクのエリアにいました。特に8月後半はここ数年のゆっくりしたものとは違い、シーズンの「ピーク」をはっきりと感じさせる忙しさでした。ここ数年は来なかった群れの鳴き声も久しぶりに聴く事ができました。シャチたちはしっかりと食べていましたし、水面を跳ねるサーモンも数多く見る事ができました。

 

 

 

 

しかし、それでも完全に昔のようではないのです。
9月17日以降、レジデントのシャチたちはどうやら本当にエリアから「アウト(出て行ってしまった)」したようで、どこにいるとかいう噂もまったく聞きませんでした。去年の記録を見返してみると、去年の「アウト」は9月18日。
数年前はコア・エリアへの「イン」と「アウト」を繰り返しながら、なんだかんだで11月くらいまではシャチたちはジョンストン海峡にいたので、やっぱり完全には餌のサーモンの量は回復していないということでしょうか。
でも忙しかった今年はここ数年に比べると回復の兆しが見えた、そのように私たちは信じています。

 

 


シャチたちはジョンストン海峡に来なければ他の群れに会えないというわけではなく、北のポートハーディ沖で100頭近くの群れ(スプリンガーと赤ちゃんを含む)が集った事が2回ほどあったそうです。
ジョンストン海峡に昔のような量のシヌーク(キング)サーモンとチャムサーモンが戻ってくれば、きっと彼らも北で留まる事なく戻ってくるはずです。

 

 

シャチたちは人間が大好きなピンクサーモンやサックアイ(紅鮭)にはまったく興味を示さないですし、人間が魚網でやるように根こそぎ捕って食べ尽す事もありません。人間が未来の事を考えてもう少し賢くなればきっと共存できると思います。

 

 

シャチたちはわたしたちにいろんなことを教えてくれます。

人間の感情を動物にあてはめてはいけないとは思うのですが、シャチの研究者はシャチが家族を失った時に抱える壮絶なストレスを知っています。家族や仲間に再会できたときの強い興奮も知っています。
でもそれをわかりやすく一般に伝えるために「悲しみ」とか「喜び」とか表現すると横やりが入るのです。そんなときわたしはよく思います。
「動物の感情については表現する側が気をつけなければいけないのもよくわかるんだけど、横やりを入れる前にオルカライブを5年間視聴して、シャチという動物のことを経験で知ってくれないかなあ?」

 

 


どうやってこの興味深い動物のことを伝えていけばいいのか未だに試行錯誤です。
動物と人間はけっこう違います。
でも同じものもあります。
人間しか持っていないものもありますし、人間が失ったものを動物が持っている場合もあります。
わたしは個人的に、野生動物のほうが人間よりも「生きる」ことについてがむしゃらだと感じています。
でも肉親の死によって強いストレスを感じ、餌をとる事すらできなくなるシャチもいます。肉親が亡くなっても他のシャチと交流し、生きていくシャチもいます。
そこは個体差です。

同じ種類の生き物であっても性格はちょこっとずつ違うんです!

 

 

多くの生き物を観察し、個体識別し、データを取り続けていないとわからないことがいっぱいあります。そして知った新しい事実は研究者や調査員だけの秘密じゃだめなんです。難しい言葉じゃ一般に伝わらない。より多くの人に自然のことを知ってもらわないと、自然との共存を考える事はできない。

 

 

 

 

 

 

 

 


皆様のおかげで今年もよく知る動物たちの「その後」を追う事ができました。

さようならを言わなければいけない個体もいましたし、新しく生まれた個体にも出会う事ができました。
毎日の出来事はこちらのブログに記してあります。
ハンソン島日記 http://a55lovestomoko.blog60.fc2.com


シャチがいて、鮭がいて、豊かな海があって…私たちボランティアはその中で夏のシーズンを小さな島で生き抜きました。人間と自然は共存できます。

私たちが気をつければ、きっとこの先も。

 

 

今年、私をこの調査の場に送り出して下さったすべての皆様に心から感謝します。

 

2014.10.1 Tomoko

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