フィリピンでのサシバの密猟防止活動（サンチェスミラ）

サシバは古くから中継地や越冬地では食料として捕獲されていました。法律も整えられ、合法的だった捕獲は違法となり、ほとんどの場所で捕獲されることは無くなりましたが密猟は続いていました。国内では宮古島が1990年代に入るまで密猟が続いていましたが、宮古野鳥の会の長年の活動が実り、密猟が無くなったという歴史もあります。その一方で、フィリピンのルソン島最北端に近いサンチェスミラでは、近年でも密猟が続いていました。国の法律が行き届かない中、密猟というよりも慣習としてサシバを捕る文化が無くなっていなかったという状況で、誰もが悪いこととは思わず、空気銃を持ってねぐらに入っていく姿が普通に見られていました。年間数千羽が捕獲されていたとのことです。

そんな状況を知り、何とかしなければと動いたのが現地のNGOであるRaptorwatch Network Philippines（RNＰ）やアジア猛禽類ネットワークです。RNPと国内からはアジア猛禽類ネットワークの代表である山﨑亨氏らの活躍により、見事サシバの密猟を無くすことができました。

その方法は子供たちにサシバの大切さを教えることでした。ルソン島最北端から北へ向かって海に飛び立つサシバたちを子供たちにも一緒にカウントしてもらうのです。そうすることで子供たちはサシバに愛着が生まれ、そして学校の中で狩猟を止めようという運動が始まりました。その訴えは子供から狩猟している親に直接届き、結果狩猟者が集まって話し合う機会も出てきて、最終的に狩猟が無くなりました。これには市長を始めとし行政が間に入って取り組んだことも大きかったですが、この地にエコツアーで人を呼び、密猟を行っていた人をガイドにするという取り組みも良い方向に向かった要因だと思います。

これは成果がはっきりと実った成功事例であり、全てがこう上手くいくわけではないですが、これによって年間数千羽のサシバが殺されずに繁殖地に戻ることができるようになったのですから、この一つの成果だけでもサシバの保全に計り知れない貢献をしたことになります。

日本鳥類保護連盟では、この事例を生かしながら、ルソン島中部のヌエバヴィスカヤ州で密猟対策の活動を行っています。この話は別の活動報告でお話しできればと思います。