プロジェクト概要

視覚と聴覚の両方に障害を抱える、盲ろう者の方は、スポーツなどのアクティブな活動を楽しむことがとても困難です。僕は、盲ろう者の友人から、「マラソンの伴走者として一緒に走ってほしい」と頼まれたことがきっかけで、走っている最中も意思疎通ができる、そんな当たり前を実現するデバイスを作りたいと思うようになりました。そしてついに、それを可能にする「ウエアラブル指点字ツール」を開発しました。ひとりでも多くの盲ろう者の方々とスポーツの楽しさを共有するために、皆様からご支援をいただければ幸いです!

 

 

手袋に仕組まれた小型振動モーターを、遠隔通信で指点字と同じように操作します。

 

 盲ろう者は約2万人。彼らへのサポートが不足しています。

 

きっかけ


はじめまして、ハートウエアデザイナーの米山爾です。心理学知見を活かしたコミュニケーションデザインアプローチで、25年以上にわたり、"こころ"に響くデザインを実践してきました。以前、インクルーシブデザインの取り組みとして、リサイクル素材を用いて、両手指の熟練動作を楽しく誘う手作りの認知症予防ゲームをつくり、脳活教室を開催するなど高齢者の方々と交流を始めました。指先の触覚や振動を頼りに遊ぶトレーニングゲームですが、もしかすると、目と耳の両方に障害がある盲ろう児の療育ツールとしても役立つのではないかと考えました。それがきっかけで、盲ろう者のご意見を伺うことを思い立ちました。

 

手指の巧緻性や集中力を高める脳活ゲームとして、
視覚特別支援学校や高齢者施設などでご活用いただいています。

 

僕の古い友人に、盲ろう者でありながら、日本で初めて大学に入学し、世界で初めて常勤の大学教授になった人がいます。その友人と30年ぶりに再会したことから、先例のない新たな取り組みが始まりました。彼の研究室を訪ねインプレッションをお願いした折、僕が重度の椎間板ヘルニアから復活し、50歳を過ぎてからマラソンを始めフルマラソンの大会に出場していることを話したことがきっかけで、専属伴走依頼の話になりました。

 

視覚障害者との伴走では、伴走用ロープを使いながら音声によって状況説明などのコミュニケーションができます。安全走行上の注意だけでなく、周囲の様子や世間話、趣味の話など情緒的な会話をしながら走るのが普通です。障害者と健常者がつながり、互いに交流を深めるところにも楽しみや意義があります。しかし、盲ろう者との伴走ではこれができません。盲ろう者と一緒に会話しながら楽しく走るという、世界でも類のない試みへのチャレンジは、コミュニケーションを生業とする僕には自然な成り行きでした。盲ろう者スポーツ支援ツールの開発はこうして始まりました。

 

指点字は盲ろう者と会話する手段のひとつですが、
スポーツシーンで行うことは困難です。

 

盲ろう者って?

 

盲ろう者の方は、視覚と聴覚の両方が失われた状態で日々生活しているため、独力で情報入手やコミュニケーションができません。テレビやラジオを楽しむことはもちろん、点字を知らなければ本を読むこともできません。まわりの人間がコミュニケーション方法を知らなければ会話をすることさえできません。このため、盲ろう者にとって、外出やスポーツなどのアクティブな活動は、きわめてハードルが高い行為と言えます。

 

そういった盲ろう者の方は国内での定義が確立しておらず、「身体障害者福祉法」では、「視覚障害」および「聴覚障害」はそれぞれ別個に規定されており、その両方をあわせた「盲ろう」に関する規定はありません。現在、盲ろう者は日本に約2万人いると言われますが、その重篤な障害とサポートシステム不足とが原因で、多くは社会参加できず、実際の人数はもっと多く、明るみに出ていない困難も多いのではないかということが推測されています。

 

目と耳の両方に障害のある盲ろう者の方とは、指点字スキルを身につけた通訳介助者が直接指先に触れて点字を打つ「指点字」で話し言葉を伝え、意思疎通をはかります。指点字というのは、盲ろう者の指を点字タイプライターの6つのキーに見立てて、左右の人差し指から薬指までの6指に直接打つ方法(*1)です。ゆっくり歩きながらでも指点字コミュニケーションは可能ですが、走りながらやりとりするのは危険かつ困難です。「リアルタイムで会話しながらスポーツをする」という健常者や視覚障害者にとって当たり前のことが、これまで盲ろう者の場合は不可能で、さらに支援者も専門スキルを必要するといった、難関だらけのサポートでした。

 

*1 東京盲ろう者友の会(http://www.tokyo-db.or.jp/?page_id=148

 

通訳・介助者要請における課題点

 

このように、ここ数年急速に広がっている通訳・介助者養成ですが、まだ始動して間もないこともあり、いくつかの課題点を抱えています。

 

まず、養成をしている側の知識・技術不足です。単に盲ろう者固有のコミュニケーション方法が使えるというだけでは、盲ろう者のニーズを満たす通訳・介助は不可能です。適切な状況説明や、コミュニケーション環境全体を管理するための技術がなければ、盲ろう者の社会参加は不可能です。しかし、そのような知識を伝えるべき指導者が、まだまだ全国に数少ないことが、通訳・介助者養成を難しくしています。

 

また、予算や人材不足から、研修会の日程にほとんど余裕がないことも大きな課題であると言えます。どの講習会・講座も、5日間~20日間程度の日数しか確保できず、これでは本当に通訳・介助を行うのに必要な高度な技術とを身につけるにはあまりに少なすぎると言えるでしょう。

 

僕はそこにデザインで何か課題解決できないか、という思いで、盲ろう者の方々の生活を豊かにすることができないか、そんな製品を作ろうと決意したのです。

 

現状、指点字のスキルが必要ですが、音声入力式を実現すれば
誰でも盲ろう者の方と会話できるようになります。

 

先ずは左右方向などを伝えるだけの簡単な振動ツールを
作り試してみましたが、伸び伸びと走っていただけました。

 

 盲ろう者の方でも、スポーツを楽しむ!そんな社会を作るきっかけとなる!

 

盲ろう者の方々も、みんなと同じように様々な経験をしたいと願っています。何とか、ひとりでも多くの盲ろう者の方々と一緒にスポーツを楽しみ、喜びを分かち合いたい…。そう考えた僕は、取り組みに賛同してくれる仲間とともに、試行錯誤の末、新たなコミュニケーションツールを開発しました。

 

それが、ウエアラブル指点字ツールです!このツールを用いれば、スポーツなどをしている時にも他者と会話し、リアルタイムでまわりの状況を確認することができます。Bluetooth遠隔操作式で100メートル離れた場所からの通信も可能なので、様々な応用が考えられます。すでに実用化しており、昨年から試作機を使って、実際に盲ろう者の方々と会話しながらランニングなどを楽しんでいます。盲ろう者交流イベント等で体験していただいた方々の多くは、ツールを使ってスポーツなどを楽しみたいと仰っています。

 

しかし、手作りの一品物ですので製作には1台あたり十数万円かかります。先ずはツールに耐久性を持たせるなどの改良を検討し量産化します。そして、指点字通訳介助の仲間とともに多くの盲ろう者の方々と「会話をしながらのスポーツ」の楽しさを共有したいと思います。ひとりでも多くの盲ろう者の方にスポーツする楽しさや喜びを味わっていただきたいです。

 

 持ち運ぶ受信ユニットはバッテリー込みで100グラム程度。
軽量かつコンパクトで機動性に優れています。
盲ろう者の方は僕の顔を見ることも僕の声を聞くこともできませんが、
ツールを介し信頼の絆で結ばれています。
ツールを使えば周りの状況などが明確に伝わるので、
盲ろう者は安心して颯爽と走ることができます。
通訳介助者が手を添える必要がないので、
コミュニケーションと同時に自由な動作が可能になりました。

 

今回のプロジェクトでは、皆様からのご支援により、ウエアラブル指点字ツールを5セット製作し、スポーツイベントとあわせてスポーツ指点字の普及のための勉強会を開催します。最初の目標を超える支援がいただけた場合には、公道を走れるタンデム自転車を購入しポタリングツアーを企画する他、さらに増産し全国の主な盲ろう者支援団体に寄贈させていただくつもりです。

 

すでに試作品を使用していただいており、お試しいただいた方からは、

「(普通の)指点字をしながら走るのは危ないけど。情報伝達ができるツールなので、伴走ロープのみでの伝達と違って、両手にスタートや左折、右折、止まるなどの情報伝達ができます。本当にすごい発明で、びっくりしました。指点字の盲ろうランナーに広がるように、とても期待しています。」
 

「もう実用的に使えますね。これは使えますよ!」

との声をいただいています。

 

ウエアラブル指点字ツールというユニークな手段を用いて「盲ろう者の方が会話しながらスポーツを楽しむ」という、おそらく世界でも前例のない取り組みを発展させ、日本から世界へアピールしていきます。「盲ろう者とバリアを超えてつながる」この取り組みに、一人でも多くの方に共感していただけることを願っています。

 

盲ろう者の方々とバリアを超えてつながり、一緒に様々なスポーツにチャレンジして参ります。

 

資金使途


量産試作費            500,000円

量産製作費(5セット分)      500,000円

人件費(研究開発等)            500,000円

タンデム自転車購入費(5台分)500,000円

イベント運営経費       100,000円

手数料(税込)                             367,200円

 

このうちの一部として、120万円を今回のクラウドファンディングで集めたいと思います。

 

 障害者や高齢者など、多様な人々を巻き込んだ社会にしていきたい!

 

僕はこれまで国内外の自動車メーカーなどに勤務し、クルマを中心に数多くの工業製品のデザイン開発に関わってきました。現在は、インダストリアルデザイナーとしての経験を生かし、超高齢社会が抱える新たな課題に立ち向かうため、認知症サポーターや盲ろう者通訳介助者となるなど、自分自身のインターフェースを拡張しインクルーシブデザイン活動に注力しています。インクルーシブデザインとは、従来様々なサービスや商品を作る際に無視されることが多かった、高齢者、障害者、外国人などの多様な人々を巻き込んでいくデザイン手法です。

 

まだ誰も見たことのないものを生み出すのがデザイナーですが、デザインの仕事の本質は、人のこころを読み、こころを動かし、ひいては社会を動かすコンセプトを構築するところにあると考えています。自分にしかできないことに注力するために、これまでの経験を統合しつつ新たなジャンルに挑戦する道を選びました。それは、健常者だけでなく障害者や認知症高齢者など、様々な方々が共生していける社会をデザインすることです。

 

具体的には、現在、視聴覚に頼らない新たな五感コミュニケーションに着目した生活支援システムやリハビリ療育ツールの開発と並行して、盲ろう者など重複障害者のスポーツ支援の取り組みを推進しています。

今回、皆さんのご支援をいただいてウエアラブル指点字ツールを量産し、盲ろう者と一緒に楽しめるスポーツイベントを開催する他、普及のため支援団体に寄贈したいと思います。

 

視覚障害者歩行支援システム(写真右)の盲ろう者への応用も研究しています(*2)。

 

*2 W&M視覚障害者歩行サポートシステム(https://wmsystem.jimdo.com

 

 誰もが障害と向き合い、喜びを分かち合える共生社会を目指して!

 

将来的には、さらに一歩進めて、音声入力方式も視野に入れています。これにより、通訳介助スキルの無い一般の健常者と盲ろう者が気軽に会話することができるようになります。

 

障害者、とりわけ目と耳の両方に障害をお持ちの盲ろう者にとって、外出やスポーツはきわめてハードルの高い行為です。健常者と同様、健康的にスポーツや余暇を楽しみたいと願っていても、その機会は非常に限られています。障害者の方々が日常生活を、支障なく、楽しく豊かに過ごせないとすれば、健常者の目線で作られた社会の方にこそ課題があるのかもしれません。

 

今後日本ではさらに高齢化が進み、誰もが何らかの障害を抱えながら生きていくことになると予想されます。障害の有無に関係なく誰もがバリアを超えてつながり、喜びを分かち合える共生社会の実現を目指していきたいと思っています。どうかこのような活動を続けていくため、皆様からのあたたかいご支援をいただければ幸いです。何卒宜しくお願いいたします!

 

月刊『視覚障害』にも取り組みが紹介されました(*3)。

 

*3 視覚障害者支援総合センター(http://www.siencenter.or.jp/sikaku/sikaku-new.html


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