プロジェクト概要

 

日本人はどこからきたのか?

出雲の猪目洞窟遺跡の人骨から、その謎に迫る。

 

ーはじめにー

皆さん、こんにちは。出雲市大社町出身で、東京いずもふるさと会という出雲出身の関東在住者の集まり(出雲市公認)の会長をしている岡垣克則です。いずもふるさと会では、これまで出雲人のルーツに迫る取り組みとして、関東在住の出雲出身者のDNA分析を行いました。

 

ーDND検査の結果ー

その結果は、予想とは大きく異なり、関東ヤマト人よりも縄文人に遺伝的に少し近く、東北の人たちの位置と似てるということがわかりました。その謎を解くカギの一つが出雲の猪目洞窟遺跡の古代人骨ではないか。古くから、出雲風土記でも猪目洞窟は、「黄泉の穴」即ち霊界の入口として紹介されており、人骨とともに縄文から弥生・古墳時代の遺物が埋まっていました。

 

この古代人骨のDNAを解析すれば、縄文・弥生人のルーツを探ることができるのではないか。こうして、猪目洞窟の人骨のDNA解析を進めるプロジェクトがスタートしました。

人骨が発見された猪目洞窟遺跡
写真:出雲市弥生の森博物館提供

 

衝撃のDNA鑑定の結果から始まったプロジェクト。

 

ー東京いずもふるさと会とはー

2007年に、出雲市の協力を得て、関東在住の出雲出身者の交流を目的としてつくられた任意団体で、現在の会員数は約450名です。会員の出身地出雲に対する郷土愛は、非常に強いものがあり、古代出雲王国の歴史に関心を持ち、出雲の古代文化に誇りを持つ会員は多数いました。

 

ー神々の国と呼ばれた出雲の人々ー

出雲は、神話の国でしたが、実際に、弥生時代の銅剣・銅鐸が多数発見され、四隅突出型墳丘墓も発見されるなど古代出雲王国の文化が栄えたことが明らかとなり、出雲大社を擁し、出雲弁の方言を話す特徴を有しています。

 

会員の中から、出雲出身者のDNAを調べてみれば、出雲人のルーツの解明ができるのではないかとの話が持ち上がり、2010年頃、国立遺伝学研究所の斎藤成也教授にDNA鑑定を依頼しました。当時、中国地方のDNAデータがなかったこともあり、斉藤教授による出雲人DNA解析の研究が開始されました。

 

画:早川和子氏

 

 

島根県の出雲人は、縄文人と近いことが判明。

 

ー出雲出身者のDNAを調査ー

東京在住の出雲出身者21名が、東京大学医学部に赴き、血液を採取され、結果を待ちました。ほとんどの会員の予想として、地理的な要因もあり、関東ヤマト人よりも朝鮮半島の人々とDNA的に近い結果がでるだろうと予測していました。ところが、斉藤教授から伝えられた結果は、衝撃的な内容でした。現代の出雲人のDNAは、関東ヤマト人よりも、朝鮮半島の人たちよりも位置的に遠く、かつ縄文人のDNAを関東ヤマト人よりも多く承継している東北地方集団の位置と似ているという結果でした。

 

ー古代の人骨よりDNAを取り出すことが可能にー

その頃、日本で初めて古代縄文人骨からの核DNAの取り出しに成功され、日本人のルーツの解明の新しい道筋を開拓されたことが分かり、さらに、三貫地縄文人の人骨DNA解析の結果、日本列島にやってきた日本人の祖先は、現在の大陸に住んでいる人達よりも、もっと古い段階に分岐した人たちであることが分かり、日本人のルーツが振出に戻っていることが分かりました。

 

ー島根半島でも古代人骨が出土ー

それならば、中国地方の出雲の古代人骨DNAを解析すれば、出雲の縄文・弥生人のルーツの解明とともに、日本人のルーツの解明に一役かうことができるのではないか、と言う話が上がりました。そこで調べてみると、島根半島の猪目洞窟で、縄文から弥生、古墳時代にかけての遺物が出土しており、弥生人や古墳時代の人骨も発見されていることが分かりました。

 

出典:「縄文人の核ゲノムから歴史を読み解く」神澤秀明(季刊「生命誌」87号)

 

ー研究室とタッグを組み、研究を前へー

この出雲人骨の解析について、齋藤教授に研究をお願いしたところ、ご快諾いただき、さらに、出雲市の出雲弥生の森博物館にもご協力をいただけることとなり、古代出雲人の人骨の解析に向けたプロジェクトがスタートしました。しかし、大学や研究所での分析や研究は、費用が限られており、分析をお任せをするだけでは、資金的な問題でなかなか分析が進まないという状況が出てくる可能性がありました。そこで、クラウドファンディングで、みなさんのお力をお借りしまして、集まった支援を、研究・分析資金を託すことで、より早く研究を進められるようになります。

 

ー古代の出雲人が日本人のルーツ解明に繋がるー

出雲には、猪目の他にも、弥生時代の古浦遺跡から出土した人骨(九大博物館保存)や島根半島美保関の小浜洞窟から出土した縄文人骨などがあります。これらを核DNAを解析すれば、新しい発見が期待できる古代人骨が他にもあり、クラウドファンディングによって、研究費用が集まることで、日本の第一線の研究者と博物館とのコーデイネートが進めることができ、古代人骨核DNA研究が加速することで、日本人のルーツの詳細が解明が進む可能性を秘めています。

 

 

〜分析・研究を行っていただく先生方よりメッセージ〜

 

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右)斎藤先生 左)神澤先生

 

 

ー古代人骨のDNAから日本人のルーツを探るー

 

現代に生きる私達は、祖先から伝えられたDNAを持っているので、現代人のDNAを調べても過去の人々についてある程度推測することができる。しかし、過去に生きていた人々のDNAを調べることができれば、直接的な証拠になる。このようなDNAを「古代DNA」と呼ぶ。技術的な制約があるので、かつてはもっぱらミトコンドリアDNAの塩基配列を調べることが行なわれてきたが、10年ほど前でから、いろいろな年代に生きていた人々の骨や歯の中に微量に残っていたDNAから、核ゲノムのDNA配列が、次々に決定されている。

 

私の研究室でも、2008年から2013年までの5年間、総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻の5年一貫制博士課程の学生だった神澤秀明さん(現在国立科学博物館人類研究部の研究員)が、古代DNAの解析をおこなった。最終的には、2016年に、福島県新地町の三貫地貝塚出土縄文時代人の核ゲノムデータを決定し解析した論文を、日本ではじめて発表することができた。次世代シーケンサーが生み出した28億7800万塩基から、ヒトゲノムの配列1億1500万塩基を選び出した。比率でいうと、決定された全塩基配列のなかの4%弱しかないが、それでも1億個を優に越えている。

 

世界のあちこちの現代人ゲノムと比較したところ、三貫地縄文人がもっとも近縁であったのは、東ユーラシアの現代人集団だった。さらにくわしく調べたところ、縄文人にもっとも近いのは、アイヌ人だった。この結果は、二重構造モデルを支持している。ただ、縄文時代は16000年前から3000年前までの13000年間続いたので、その間に日本列島の南北で遺伝的な変化が生じた可能性がある。今後は、「縄文人」とひとくくりにせず、日本列島のいろいろな地域・時代の縄文人のDNAを調べる必要がある。

 

※この文章は、斎藤成也『核DNA解析でたどる日本人の源流』(2017年、河出書房新社)にもとづいている。

斎藤成也

国立遺伝学研究所

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ー今なぜ猪目人骨が素晴らしいかー

 

この10年で古代人のゲノムを調べる手法が確立し、ゲノムから私たち日本列島人の起源と成立についてアプローチすることが可能となりました。そこで私たちは、重要な時代である弥生時代と古墳時代の人骨に着目し、これまで数体のゲノムを調べてきました。これによって新知見が得られてきている一方で、これまでゲノムデータの得られた人骨は、弥生時代が九州で古墳時代が関東というように地域がばらつき、またデータの量が限られるなどの問題がありました。

 

そこで今回注目したのがこの猪目洞穴遺跡の出土人骨です。日本の土壌は酸性であるため、埋没した人骨が数千年も消失せずに残るのは稀ですが、この遺跡は素晴らしいことに弥生時代と古墳時代のいずれからも人骨が出土しています。

 

そのため、弥生から古墳への遺伝的変遷を同一の遺跡で調べることができます。また、最も驚かされるのが、その保存状態の良さです。その良さについては大谷ら(1949)*1でも報告されており、余りにも保存良好で、比較的新しく埋没したのではないかと疑うほど、と表現されていました。

 

これほど保存の良い古代の人骨は珍しいのですが、実はこれに似た経験を縄文人骨でしています。その縄文人骨も例外的に保存が良く、DNA分析でも他の縄文人のDNAよりもはるかに多くのデータが得られました。この猪目の人骨でも同様にDNAの保存状態が極めて良好であることが期待されます。

 

*1 大谷從二、大國 一雄、池田 次郎.出雲國猪目洞穴遺跡概報.人類學雜誌.1949年61巻1号 p.1-6.

神澤秀明

国立科学博物館

 

 

分析・研究内容とスケジュール

 

2018年12月:現地調査:猪目洞窟人骨からのサンプリング

2019年1月~2月:サンプリングのレプリカ作成

2019年2月~3月:サンプリングからの核DNA抽出・DNAを構成する塩基配列の決定 

2019年3月~2019年11月:遺伝情報を担っているゲノムの解析(古代ゲノムデータとの比較分析)

2019年11月:研究成果報告会

 

※今回の資金使途は、2019年末までにかかる分析・研究の費用として充てさせていただきます。なお、分析・研究結果自体を保証をするものではございません。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。分析・研究の経過につきましては、新着情報内での定期的な発信を予定しております。

 

 

写真:出雲市弥生の森博物館提供

 

 

日本人の祖先はどこからやってきたのか。人類のルーツに繋がる第一歩。

 

ーヒトはアフリカで生まれ、全世界に移動してきた。日本人の祖先は、アフリカ大陸からどのように移動して日本列島にたどりついたのか?ー

 

縄文人の最新のゲノムDNA解析の結果、縄文人は現代の東南アジア人とも北東アジア人とも近くないことが判明し、縄文・弥生人のルーツ探しは今振り出しに戻ってしまいました。

 

齋藤教授らの研究により、縄文人・弥生人といっても従来考えられていた遺伝的に均一な存在ではなく、縄文時代・弥生時代において、列島の東西で遺伝的な性格を異にする集団が居住していた実態が明らかになるつつあります。東北・北海道・長野・愛知県の縄文人の核DNA解析は進んでいますが、中国地方の古代人骨の研究は、試料の蒐集が困難なこともあって遅れており、とりわけ、古代日本の中心地であった出雲の古代人骨のDNA研究は今までに全くなされていません。

 

ー膨大な情報を知ることができる核DNA解析が謎に迫るー

核DNAの解析は、ミトコンドリアDNA解析に比べ、はるかに膨大な遺伝情報が得られるため、出雲人骨の解析は、「出雲人のルーツ」を探るだけではなく、日本人のルーツを探ることにもストレートに繋がっていく可能性は非常に高いと考えられます。

 

この研究を進めていくためには、今回のプロジェクトを通じて、広く古代出雲文化の存在を日本全国の皆様にご理解いただくことが不可欠です。是非、我々と一緒に日本人のルーツに迫るロマンを感じていただければ嬉しい限りです。

 

 

画:早川和子氏

 

ー日本人のルーツ解明から地域活性化へ向けてー

今回の取り組みによって、島根半島の一洞窟が脚光を浴びることにより、出雲が改めて古代文化の中心であったことが広く認識されれば、出雲への観光客の増大にも繋がるもの期待されます。出雲地域の活性化をもたらすものと思われますし、地方自治体と民間団体が協力して地域活性化のための一成功事例になればと考えております。

 

日本人のルーツを解明する第一歩、そして出雲が活性化していく第一歩となる、このプロジェクトへご賛同のほど、よろしくお願いいたします。

 

日々、講演会などで出雲について学びながら、取り組んでいます。

 


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