戦没学生の音楽作品に命を吹き込み、今を生きる場所を藝大に。

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支援総額

1,710,000

目標金額 1,000,000円

支援者
103人
募集終了日
2018年5月15日

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2018年04月04日 10:28

「戦没学生のメッセージⅡ」の作曲家たち~生徒編その1草川宏

7月29日(日)に開催する「戦没学生のメッセージⅡ~戦時下の音楽・教師と生徒」コンサートでは、4名の戦没学生と当時の音楽学校の教師4名の作品が紹介されます。そこで今回から新着情報で、それらの作曲家を一人ずつ順番にご紹介していきます。最初は戦没学生からで、トップバッターは草川宏さんです。

草川宏(1921~1945)(草川誠氏所蔵)

◆草川宏(1921~1945)

草川宏さんは大正10年10月28日、東京に生まれました。お父さんは童謡《夕焼小焼》などの作曲者として有名な草川信さんです。昭和15年、明星中学を経て18歳で東京音楽学校予科に入学しました。そして翌年4月、本科作曲部に進みます。当時の東京音楽学校は予科で1年間予備的な勉強をした後、本科に進むというシステムで、その代わり本科は3年で卒業することになっていました。草川さんは作曲や理論を、信時潔、下總皖一、橋本國彦、H.フェルマーといった先生方に学びました。

草川さんが本科に進んだその年の12月、太平洋戦争が始まります。開戦当初こそ日本軍が優勢だったものの、徐々に戦局は悪化。兵力不足を補うため、昭和16年には学業期間を短縮する繰上げ卒業の制度が導入され、さらに昭和18年になると、それまで徴兵が猶予されていた文科系学生たちが、休学扱いで徴兵され出征するようになります。いわゆる学徒出陣です。

草川さんも昭和18年9月、本科を繰上げ卒業となりますが、彼の場合は徴兵検査が丙種合格だったため、すぐに徴兵されることはありませんでした。彼は研究科(現在の大学院)に進学し、指揮法を学びました。結局、草川さんに赤紙(召集令状)が届いたのは、翌昭和19年6月1日のことでした。彼は日記にその時の気持ちを次のように認めています。

「本日いよいよ晴れのお召し(臨時招集)の令状をいただく。これで僕も世界に冠たる皇軍の一員としてご奉公できるわけである。父から令状を渡されたときには、思わず嬉しさ、感激で胸がいっぱいになった。今までほとんど全部といってよいくらいの友人を皇軍に送り出したのに、それにもかかわらず自分のみ銃後に取り残され、こんな淋しいかつ情けない、肩身の狭い思いがしたことはなかった」

草川さんの日記(昭和19年6月1日)

そして6月15日、自宅近くの世田谷東部第十二部隊に入隊しました。やがて南方へ動員されることとなり、いったん広島に駐屯した後、昭和19年10月30日、船に乗り込み出発しました。その後の消息は定かではありませんが、昭和20年6月2日、激戦地フィリピンのルソン島バギオで戦死したと伝えられています。遺骨を受け取りに行った弟の誠さんに渡された箱の中には、遺骨はかけらさえなく、木の位牌が入っていただけだったそうです。

草川さんの譜面は、誠さんが大切に保存していたおかげで、他の戦没学生に比べれば多く残っています。演奏可能な曲はおよそ20数曲で、島崎藤村の詩に作曲された4曲の歌曲、2曲のピアノソナタなどが含まれています。そんな中から、今回は《昭南島入城祝歌》という曲を演奏します。(大石泰)

 

◆プラス情報「《昭南島入城祝歌》の蘇演」

《昭南島入城祝歌》の「昭南島」とは、日本軍の統治下におかれていた頃のシンガポールのことです。昭和17年2月、日本軍はマレー作戦勝利の勢いそのまま、当時イギリスが植民地支配をしていたシンガポールに進攻します。そしてわずか10日余りで陥落させ、内地では勝利を祝ってさまざまな祝賀行事が行われました。その時に詩人の佐藤惣之助(1890~1942)によって書かれた詩が『昭南島入城祝歌』です。

草川さんはその詩を元に、4人のソリストとコーラス、そしてオーケストラという大編成の曲を構想し、作曲に取りかかりました。そこには、後に彼が師事することになる作曲家、信時潔が昭和15年に発表した交声曲《海道東征》(北原白秋作詩)に刺激された可能性もあります。ただし、草川さんはこの曲を、当初構想したオーケストラ曲としては完成させることが出来ませんでした。

作曲は一応最後まで終わっていますが、判別のつかない書き込みや、消し跡が残っていて、これを演奏するためには、草川さんの意図を汲み取った補作が必要です。この曲のスケッチ(下書き)は2種類残っていて、一つは鉛筆書き、そしてもう一つはペンで書かれています。おそらくペン書きのものが、後で書かれたと推測できるので、今回はそれをベースに、必要に応じて鉛筆書きの方も参照しながら、草川さんの創作の跡をたどってみることにしました。

《昭南島入城祝歌》の二つの草稿(右が鉛筆書き、左がペン書き)

この下書きをよく眺めると、草川さんが最初から伴奏をオーケストラにするつもりだったことが判ります。たとえば、伴奏部分は通常の2段のピアノ譜ではなく、時には五線が4段にもわたり、とてもピアノでは弾ききれない多くの音が書かれています。それらは、オーケストラの響きを想定した和音の構成音なのです。しかも、それぞれの音に楽器が指定されていたりします。またその他にも、この旋律はファゴットで、これはトロンボーンでなどと、後にオーケストラにすることを意識した書き込みが見られます。

そこで補作とオーケストラへの編曲を作曲家の高橋宏治さんに依頼し、まず草川さんの下書きを書き込みも含めて浄書することから始めました。そして次の段階として、コンサートでこの曲を指揮する作曲科の小鍛冶邦隆先生にも加わっていただき、歌のパートとオーケストラのパートをはっきり区別できる譜面を作成しました。これから疑問の残る音を点検して、それからようやくオーケストラへの編曲に取りかかります。演奏にこぎつけるまでの道のりは、まだまだ遥か遠くです。

「戦没学生のメッセージⅡ」の作曲家たち、次回は葛原守さんの予定です。(大石)

譜面の疑問点をチェックする作曲家の小鍛冶先生(左)と高橋さん(右)

 

リターン

3,000


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戦没学生の音楽史料を未来へ:web資料館を応援

●演奏藝術センターから感謝の気持ちを込めて御礼状

●「東京藝大アーカイブズ友の会」会員証(会員番号付き。ただしすでに会員の方には発行されません)

●オリジナルクリアファイル

支援者
19人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年6月

10,000


【コンサートにお越しいただける方へ】「戦没学生のメッセージ」コンサートをお楽しみください

【コンサートにお越しいただける方へ】「戦没学生のメッセージ」コンサートをお楽しみください

●3,000円のリターン(①お礼状、②会員証、③オリジナルクリアファイル)

●当日のコンサートご招待券
*2018年7月29日(日)14時~開催。詳細は、プロジェクトページをご覧ください。

●昨年開催した「戦没学生のメッセージ」コンサートライブCD 

支援者
37人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年9月

10,000


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【コンサートへお越しいただけない方へ】「戦没学生のメッセージ」コンサートの録音CDをお届けします

●3,000円のリターン(①お礼状、②会員証、③オリジナルクリアファイル)

●当日のコンサートの録音をCDにおさめてお送りします。(非売品)

●昨年開催した「戦没学生のメッセージ」コンサートライブCD 

支援者
29人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年9月

30,000


【アーカイブ研究やコンサート制作の舞台裏をお楽しみください】

【アーカイブ研究やコンサート制作の舞台裏をお楽しみください】

●10,000円のリターン(①お礼状、②会員証、③オリジナルクリアファイル、④当日のコンサートご招待券*2018年7月29日(日)14時~開催。詳細は、プロジェクトページをご覧ください。⑤昨年開催した「戦没学生のメッセージ」コンサートライブCD)

●大学史史料室の解説付き見学会(1回の人数制限あり)or奏楽堂バックステージ・ツアー
*日時は別途調整いたします。

*コンサートにご参加が難しい方は、代わりに、当日のコンサートの録音をCDにおさめてお送りします。(非売品)

支援者
14人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年10月

50,000


【戦没学生のメッセージをその映像と共に記憶にとどめてください】

【戦没学生のメッセージをその映像と共に記憶にとどめてください】

●30,000円のリターン(①お礼状、②会員証、③オリジナルクリアファイル、④当日のコンサートご招待券*2018年7月29日(日)14時~開催。詳細は、プロジェクトページをご覧ください。⑤昨年開催した「戦没学生のメッセージ」コンサートライブCD、⑥大学史史料室の解説付き見学会(1回の人数制限あり)or奏楽堂バックステージ・ツアー*日時は別途調整いたします。)

●当日のコンサートプログラムにお名前を掲載
●当日のコンサート記録DVD(非売品)

*コンサートにご参加が難しい方は、代わりに、当日のコンサートの録音をCDにおさめてお送りします。(非売品)

支援者
3人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年10月

100,000


【演奏藝術センターのコンサートをお楽しみください】

【演奏藝術センターのコンサートをお楽しみください】

●50,000円のリターン(①お礼状、②会員証、③オリジナルクリアファイル、④当日のコンサートご招待券*2018年7月29日(日)14時~開催。詳細は、プロジェクトページをご覧ください。⑤昨年開催した「戦没学生のメッセージ」コンサートライブCD10,000円のリターン、⑥大学史史料室の解説付き見学会(1回の人数制限あり)or奏楽堂バックステージ・ツアー*日時は別途調整いたします。、⑦当日のコンサートプログラムにお名前を掲載、⑧当日のコンサート記録DVD(非売品))

●演奏藝術センター主催のお好きな演奏会に3回までご招待

*2018年7月29日(日)のコンサートにご参加が難しい方は、代わりに、コンサートの録音をCDにおさめてお送りします。(非売品)

支援者
4人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2018年10月

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