「草川宏のレゾンデートル」コンサートが開催されました

去る7月27日(土)、東京藝術大学第6ホールにて約150名のお客さまをお迎えして、アーカイブ推進コンサート2「作曲家・草川宏のレゾンデートル」が開催されました。これはこの4月に本学大学史史料室のホームページ上に開設された、戦時音楽学生Webアーカイブズ「声聴館」のオープン記念コンサートであり、今回は4人の戦没学生のうち草川宏さん(1945年6月2日、フィリピン・ルソン島バギオにて戦死)に焦点を当て、彼のピアノ曲、室内楽、歌曲等全10曲を紹介しました。

曲目は、ピアノ曲が《Sonatine Nr.1(子供の世界)》《Scherzo》《Rondo》の3曲、室内楽が《絃楽三重奏のための変奏曲》、そして《晩秋》《秋に隠れて》《蟹の歌》《浦島》《黄昏》《星と花》といった6曲の歌曲でした。今回あえて草川さんの曲だけ取り上げたのは、彼の作品の譜面が一番多く遺されているからですが、それには二つ理由があります。

一つ目は草川さんの東京音楽学校での在籍期間が、他の人に比べて長かったことです。草川さんは昭和15年に予科に入学、昭和18年9月に繰上げ卒業となりますが、徴兵検査で「丙種」合格であったため、召集令状がすぐには届きませんでした。そのため、彼は繰上げ卒業後も研究科に進学し勉学を続けました。草川さんの元に召集令状が届いたのは、翌昭和19年の6月になってからのことでした。

戦没学生のうち、鬼頭恭一さんと村野弘二さんの2名は、昭和17年予科入学の同期生ですが、彼らの場合は翌18年11月に仮卒業となり、その年の内に入隊しています。つまり、彼らが東京音楽学校で作曲を学んだ期間は2年に満たなかったわけです。それに引きかえ、入隊時に研究科の学生であった草川さんは、鬼頭さんらに比べて音楽学校在籍期間が長く、より多くの作品を書く機会があったと言えます。

そして二つ目の理由が、幸いにも草川さんの実家が、東京であるにもかかわらず、奇跡的に空襲に遭わなかったことです。そのため、弟さんが大切に保存していた楽譜類が焼けることなく、私たちがお預かりすることができました。草川さんの遺した譜面で演奏可能な曲は、数え方にもよりますが25曲ほどあります。そのうち「戦没学生のメッセージ」プロジェクトで演奏した曲は15曲で、これから残りの曲も引き続き演奏していくつもりです。

4月にオープンした「声聴館」は、戦没音楽学生の資料・楽譜などを収蔵、公開するWeb資料館ですが、目で見て鑑賞できる美術とは違い、音楽の場合は楽譜を眺めたからといってそこから音楽を感じ取ることはできません。どうしても音として再現する必要があり、「声聴館」で音源を公開していくのはそうした理由からです。この日の演奏も、今後順次公開して行きますので、是非「声聴館」を訪れていただければと思います。https://archives.geidai.ac.jp/seichokan/

「戦没学生のメッセージ」プロジェクト代表 大石 泰

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