7月29日(日)開催の「戦没学生のメッセージⅡ」コンサートの目玉の一つは、草川宏さんの未完の大作《昭南島入城祝歌》(佐藤惣之助詩)の補作完成版の初演です。これまでにもお伝えしてきたように、この曲は下書きが残されているだけですが、一応最後まで作曲されていて、なおかつ作曲者が将来的にオーケストラの曲にすることを想定した書き込みが随所に見られます。

草川さんが《昭南島入城祝歌》の作曲にとりかかるその2年前の昭和15(1940)年、彼の作曲の師である信時潔が交声曲《海道東征》(北原白秋作詞)を発表しています。この曲は紀元2600年を祝うために書かれた、ソリストとコーラス、そしてオーケストラという大編成の曲で、草川さんが《昭南島入城祝歌》を作曲するに当たって、《海道東征》を参考にしたのではと思える節が多々あります。そうでなくとも、草川さんが作曲の師である信時さんから、大きな刺激と影響を受けた可能性は十分考えられます。

現在、作曲科の小鍛冶先生の監修の元、藝大作曲科の卒業生である髙橋宏治さんがオーケストレーションを進めています。その際、下書きに書き込まれている草川さんの響きのイメージを出来るだけ尊重することはもちろんですが、先生である信時さんのオーケストレーションも参考にしながら、当時の響きの再現を心がけようと考えています。小鍛冶先生のコメントをご紹介します。