7軒の農家さんの集まりから日本を代表する6次産業企業へ

 

2018年6月末日、私はお中元時期でご多忙な早和時果樹園さんを訪問し、専務のマークン(以下「マー」と表記)、常務の大浦(以下「大浦」と表記)さんにお時間を割いて頂いて、3時間に及ぶインタビューをさせていただきました。
第2弾の今回は、6次産業に至る過程に焦点を当ててお伝えしていきます。

株式会社早和果樹園 取締役専務のマークン(左)と取締役常務の大浦さん(右)

 

平成12年 法人化への道:危機意識 ✖ タイミング ✖ ノリ?

    

乙井  どういう経緯で早和さんは6次化に進んでいかれたのですか?従来の共撰(共同撰果場組合)を飛び出した7軒の農家さんの集まりが、自分たちの共撰を持つようになり、ベンチャースピリットでご自身たちの理想を実現するべく歩み始めました。もがいてもがいて…のプロセスがあったことは想像に難くないですが、ご自身たちでみかんの加工品を作ったり、流通や販路を開拓されるまでの過程で一体何があったんですか?

 

マー  (大浦さんの方を見て)その話、聞かせてよー。

 

大浦  僕はその時は青年海外協力隊のボランティアでタイに居たんです。みかんの加工を始める直前のことです…。

 

マー  直ぐに帰ってくるっていうてたのに、帰国延期までして…

 

乙井  大浦さんはタイで一体何をしてたんですか?

 

マー  当時、タイに何しに行ってんのよ?ってヤスオ(大浦さん)に聞いたら「現地の人らと梅干しを作って日本人マーケットで売ってる」って。

 

大浦  エネルギーのある国は、時代を飛び超えますね。インフラを待ってても10年はかかるので、例えば固定電話を飛ばして皆がスマホになります。そんな海外での浦島太郎生活が3年ほど続きまして、共撰で有限会社を作ろうという話になりまして、平成12年(2000年)に有限会社早和果樹園になりました。

 

マー  その頃、僕らは20代半ば。7軒のうち、僕ら世代の後継者が4人になるって時に「この先どうするんか?このままみかんだけやってていいんか?」って話になって。丁度農業の法人化を県が推進してて、法人協会に全員で話を聞きに行った。でも「そもそも法人って何よ?」って感じで、メリットもデメリットもさっぱり…というところから「取り敢えずええんちゃう?やっとこか!」と(笑)。

 

大浦  話題性にすぐ飛びつく(笑)。農業で会社になっているところは当時少なかったんです。

 

マー  7軒の「他人さんが集まっている法人」というのはなかったかな。

 

大浦  単価が高くて儲かる畜産とかではあるんですけど、果樹ではなかったんちゃうかな?

 

マー  梅干しとかで一農家で一法人はあったけど、ここら辺では初めてやった。当時メリットはわからんかったけど、デメリットもわからんかった中で、ようやったわ。

 

大浦  「梅は梅干しが儲かってるんやから、みかんも加工したら儲かるんちゃうん?」ってノリ(笑)。周りでも先見の明のある法人協会に応援してくれる人もいましたし、タイミングとしてもやりやすかったんですね。
    
平成15年 マルチドリップ栽培に着手:「まるどりみかん」への取り組み

    
大浦  和歌山には「まるどりみかん」っていうマルチドリップ方式で栽培したみかんがあるんです。その話の前に、例えば香川県とか水が豊富ではない県ではため池などの灌漑施設が整っているんですけど、ここら辺(有田)でやってるみたいにスプリンクラーで畑全体にやるようなことは、そういう地域ではできないんです。だから、ピンポイントで根に水滴を垂らしてちょっとの水で効率よく育てようとするマルチドリップ栽培の方法が発達しました。

 

この栽培方法は雨を完全にカットしてドリップ灌水の少ない水だけでみかんを栽培する方法なんです。使用する水を少なくできるだけでなく、ええみかんができるんです。ハウスみかんを路地でやるイメージ感じ。ハウスみかんはハウスの中でを完璧にコントロールしますけど、屋外で「マルチシート」という雨水をシャットアウトする白いシートを根元に敷くんです。

 

◎マルチシート栽培:白い多孔質フィルムをみかんの木の下に敷き、土の水分をコントロールする栽培方法。余分な雨水を除き、太陽の光を反射させて十分に光合成させて育てるので、みかんの味が凝縮され、濃厚で糖度が高く、適度な酸味のみかんができる。

 

マルチシートを敷くと、反射効果もあるので樹幹の中の陽の当らんみかんにも太陽光の照り返しを当てられるので、美味しいみかんができるんです。そしてマルチドリップで一番いいことがあります。みかんを収穫する時が1年で一番忙しい時期なんですが、次の年のために根に肥料をやって樹体の回復をさせなければならない重要な時期でもあるんです。でも忙しくて肥料をやるのが大変。でも、マルチドリップ灌水の中に液肥を入れて施肥することで、毎年美味しいみかんが確実にできることになるんです。素晴らしい方法なんですけど、それを「やってみやんか?」と言われて、「やってみようよ」いうことになり、段階を踏んでそれぞれの畑で実証実験をすることになりました。

 

◎ドリップ灌水:みかんがおいしく育つのに必要最小限の水分と養分を混ぜて、根元に点滴灌水(てんてきかんすい)するシステム。

 

マー  …と、いうても水源の確保が必須やからね、それが一番難しっちゃあ難しい。その水をどこから持ってくる?って話になった時に、うちは水道水でやることになった。

 

乙井  むっちゃお金かかるやん!

 

マー  意外と有田市は水道代安くて、そんなにはかからなかった。水ないところに引っぱってきたり、水汲んで何回も持っていくとかじゃないから、労賃があんまりかからず水道引いたらいいだけやった。

 

乙井  マルチドリップの水は果樹にどうやってやってるの?

 

マー  タンクに一旦溜めてるんやけど、モーターか落差の水圧で。畑に引いたチューブには均等に穴が開いててそれでやれる。

 

乙井  ということは、畑の中を縦横無尽にチューブが引かれてるの?

 

大浦  そうなんです、最初にそれを引かなあかんのです。

 

マー  最初は設備投資にちょっとお金がかかるので、そんなに全部が全部はできない。それと水道は引けない、地下水ない、山水も出えへんような土地はやりたてもやれやん(できない)。条件は満たされんとできんけど、仕事が楽になるし、みかんもええもんできるやろうということで、そういう技術を段畑でやれるのかを試験させてくださいというのが最初の話やった。美味しいみかんができるし、有限な水を効率的に使うことを全国的にも広げたい国の試験場が、段畑でできるかどうかを実験したかった。そこに和歌山県もその話に乗ってきて、ブランドも立ち上げた方がええんちゃうかと言って来た。

 

乙井  おー、一気に来たね!ブランド化まで!

 

マー  ほんで「まるどりみかん」っていうブランド名を考えた。ほんまは「マルチドリップ栽培」の「マルドリ」なんでカタカナなんやけど、そこを和歌山県が考えて「まるごと採れてまう」って意味もこめて「まるどりみかん」ってひらがなになった。

 

大浦  お陽さんのあたる条件のいいところからはいいみかんが採れますけど、この栽培方法は日当たりの悪いところでも全部熟したいいみかんが採れるんです。「まるどり」はやっぱり違いますわ…。しかも凄いなあと思うのは毎年美味しいみかんが採れるところですね。

 

乙井  みかんは「隔年」で良いみかんができるって聞きますね。

( ´ー`).。oO(フフ…実は、川口新右衛門さん情報…)

 

マー  マルチ栽培ってシート敷くだけの方法は元々あって、いいのは分かってたんよ。時期の後半になってきたら畑に水を入れたくない。入れたらぶよぶよの美味くないみかんになってまうから。シート敷いたら水防げるし反射効果もあるってわかってたけど、逆にみかんが固くなってしまうこともある。それと、さっきも話あったけど秋にみかんの樹に「晩飯」あげやなあかんのに、シート敷いてるから晩飯あげれんのよ。飯抜きで仕事せえっていうてるようなもんで、そしたらみかんは「もう来年やーめた!」ってなる。それで「隔年」が助長されてしまう。でもマルドリは液体で肥料もやれるから、点滴?栄養ドリンク?をやるので晩飯喰えない状態じゃないから、次の年もちゃんとみかんが成ってくれる。

 

大浦  あと、いいのが雑草も生えないんで除草剤もやらんでいいんですよ。秋の草の種が出来んから、春も生えないんです。

 

◎マルドリ方式:マルチシート栽培とドリップ灌水2つの栽培方法を組み合わせた究極の栽培方法。正式名称は「周年マルチ点滴潅水同時施肥法」と言い、マルチシート被覆(年中)+点滴かん水(ドリップチューブ)+液肥施肥を組み合わせた技術。

 

乙井  ( ˘⊖˘) .。oO(マルドリをくまなく敷設できたら、除草剤いらんやん!)因みに有田でマルドリはどのくらい普及してるの?

 

マー  あんまり。じわじわ増えている。初期投資で何十万かかかるのとその評価ができへん。マルドリ栽培で作った「まるどりみかん」ってブランドで最初やってたけど、それだけ手間かけて作ったけど、その値段でよう売らんというか。もしくは手間賃が出荷するお金がかかり過ぎるというか。

 

乙井  ブランド作ったはいいけど、その価値がちゃんと伝わらんってよくある話やけど、本当に難しいよね。

 

マー  それで、みんな「まるどりみかん」辞めてもたんよ。マルドリ栽培の作り方は残ってるで。もともと県が進めた「まるどりみかん」は当時各共撰が取り組んで、でっかい共撰5つか6つでみんなしてわーってやったんやけど、いま残ってんのはうち(早和果樹園)とありだ共選(JAありだ)くらい。やってる人が少ないから、大型共撰が扱うには面倒くさいだけなんよ。手間かかるし手数料も引いたら農家の身入りが普通より少なかったんよ。手数料はJAとかが出荷する為に箱代やったり資材代やら運賃やら要るわけやん。それを全部差っ引いたら、農家に入るお金が普通より減ってたんやな。

 

大浦  出荷に手間がかかり過ぎるんやな。スタンドパックっていうてスーパーに並べるための県が作った特別な資材使ってきれいに箱詰めするんですけど…。

 

乙井  でも現場に居ると痛いほどよくわかる話ですよね。ブランド立ち上げて頑張ってやったけど、なかなか実態が現実に伴ってこなかったていう…。

 

マー  自分らはもともと小型共撰で、細かい対応も元々やってたからできた。

 

乙井  それは…オカンらのパワー?

 

マー  まぁ…そやな(笑)やってくれたさかいに、未だに続いてて辞めれん(笑)。

 

大浦  そんで、またそれなりの値段で販売してるからね。

 

乙井  素晴らしいわ! ( ˘⊖˘) .。oO(小説『有田川』の主人公の如き、芯の強いお母様方が早和果樹園を支えてらっしゃるんですね)

 

 

共撰から飛び出した新しいもの好きの7軒の農家さんたちが、若い後継者4名たちと共に「この先、従来のやり方で良いのか?」と自問自答し、その時のノリも手伝って法人化を果たし(笑)、究極とも言えるみかん栽培方法に着手しました。その後、どういう経緯で生産・加工・販売までを手がける6次化を果たしたのでしょうか?インタビューはまだまだ続きます。

 

<次回に続きます>

 

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