2013年、フィリピン留学中だった私は、卒業論文の調査のため、フィリピンにて大学に通っている数少ない視覚障害者たちに、主に小学校から大学までの教育環境についてインタビューを行いました。ここからは当時大学生だった彼らの声をご紹介します。

 

 一人目は、当時大学4年生だったグレース。音楽の先生になることを目指していました。生まれてすぐ失明した彼女は、小学校の時は特別支援学級のある地元の学校に通いました。ただし彼女が住む市では中等教育以降障害のある学生へのサポートは行われていなかったため、小学校卒業後、フィリピン国立盲学校に進学しました。大学進学を目指していた彼女にとって、それが高校卒業資格を得る唯一の手段だったのです。

 

 小学校時代は点字での教科書が支給されず、誰かに音読してもらい、宿題も家で母親に代筆してもらっていました。盲学校に転校して初めて、点字の教科書を手にし、宿題も直接点字で提出できるようになったと言います。点字の教科書を渡されていなかった小学校時代、もっとも苦労した科目が数学です。図形や方程式などを音読だけで理解することは難しく、どんなに勉強しても成績は平均点以下でした。

 

 在学している大学において、彼女は初の視覚障害学生なので、大学での学習支援制度はほぼ整っていません。もちろんテキストやプリントを点字でもらえるわけもなく、データでさえ提供してもらえないので、授業を録音し、テキストなども母親等に音読してもらったのを録音して繰り返し聞くことでなんとか授業内容に付いて行っています。

 

 環境が整っていないせいで他者以上に努力をしても報われないことがあるが、そこまで苦労しながらも進学し勉強を続けたいと思う理由は何かと問うたところ、

「視覚に障害があってもここまでのことができるんだということを社会に証明したいから。無事就職して、これまで支えてくれた家族に恩返しがしたいから」と彼女は答えてくれました。

 

盲学校で勉強する男の子

 

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