ミャンマープロジェクト進捗のご報告 ーこれまでと、これからー

いつもたくさんの応援を頂き、本当にありがとうございます!e-Educationの古波津です。今回はみなさんにお伝えしたい大切なお話があり、この記事を書いています。

 

■パレワでの活動の現状

パレワでのソーラーパネル設置、及び教育支援の実施に関して。

プロジェクトを実施すべくタイミングを見計らっておりましたが、現在、以下の理由によりパレワでのプロジェクトが実施できていない状況にあることをご報告いたします。

 

① ロヒンギャ難民問題

度々ニュースでも報道されている通り、今年8月末、ミャンマーロヒンギャ難民のバングラデシュへの避難により、ラカイン州に住居を構えていた少数民族、ロヒンギャの60万人以上が隣国バングラデシュへ難民として逃れる、という事態が発生してしまいました。パレワはラカイン州のすぐ北に位置しており、ソーラーパネルや映像授業を届けるためにラカイン州を経由して進む必要がありました。「たいち、ぼくもいろいろ情報を調べているけどミャンマー中が混乱している中、今この地域に入るのは危険だ。ミャンマー人ですら難しいよ」。パートナーのジョセフの言葉に、肩を落としました。

パレワまでの経路であるラカイン州への立ち入りが難しくなり、一旦プロジェクトをどう進めるかを静観する必要がありました。

 

 

② パレワでの紛争勃発

2016年3月に民族武装軍とミャンマー国軍の紛争により小学校が破壊、民家へも被害が及ぶなど、これまでも幾度となく和平に向けたアプローチが取られるものの実を結んでこなかったパレワ。それ以降大きな争いはなく、安定しているかのように見えていました。ぼくたちがクラウドファンディングに挑戦したのも、そんな紛争に悩まされてきたパレワで挑戦することでミャンマーに平和と希望の光を灯したかったからです。

しかしロヒンギャ難民問題で悩まされていた11月、以前から不安定だったこのパレワで、紛争が再発してしまいました。300人を超える村人は戦禍に巻き込まれることを避けるため地域からの退去を余儀なくされ、ぼくたちがこの地域へ立ち入ることも、できなくなってしまいました。

 

ここにきて、国際協力の難しさを痛感させられました。

子どもたちが地域を、国を担っていくために必要な根幹となる教育。地域の平和と、国の未来を創っていくための教育。それも、今回のようないくつかの事象によっては、どんなに届けたいと思っていても活動が継続できなければ効果を生み出すことは出来ないこと、方針を転換しなければいけないこと、その悔しさでぼくの胸はいっぱいでした。

 

■今後のプロジェクトの方向性に関して

では、そんな想いを抱えながらこれまで何に取り組んできたのか。

パレワでの活動が難しくなってしまった今、今取り組んでいることをお伝えさせてください。

 

2013年にe-Educationがミャンマーでプロジェクトを開始して早4年。これまで村で運営されている寄宿学校など、先生が不足している学校や自習時間といった授業の無い時間帯でのみ活用をされてきたe-Educationの映像授業。このままのモデルで本当にミャンマーの教育を変えられるのか、ぼくたちは本当にミャンマーの子どもたちの力になれているのか、そう悩んでいた時、一つの取り組みが実を結びました。

場所はパレワもある、同じチン州のハカという地域。この地域はパレワよりも北に位置しており、訪問のためにラカイン州は経由しません。並行して教育支援に取り組んできたこの地域で、これまで実現してこなかった「公立学校でのe-Educationプロジェクト」がようやく本格始動したのです。

 

“ようやく”という言葉に込めた思いを、活動を応援してくださっているみなさんにもぜひお伝えさせてください。

 

-今年6月、前途多難-

6月と言えばミャンマーの学校では新学期が始まる月です。

 

昨年までの経験から「e-Educationがもっと現場で必要とされている支援を行うためには?」「どうやったらより多くの教育機会を求める子どもたちに対し支援が実現できるのか」をメンバーと何度も議論してきました。たどり着いた答え。それは“公立校での支援の開始”でした。

 

公立校で導入出来れば生徒にとっては定期的に映像授業をしようしてもらえる学習環境をつくることが出来、先生の指導力を伸ばし、また定期的なモニタリングから映像授業によるインパクトを正確に計測できることが可能になると考えたのです。

 

また、長期的に事業を拡大する上でも、公立校での導入モデルが出来ることで他の公立校への展開、その他州への展開も可能になると踏んだのです。

 

ただ、公教育で導入するには教育省からの許可が必要でした。

 

「よし、そうと決まれば導入に向けて教育省、学校側と話すぞ!」

 

そう意気込んだものの、現実はそんなに甘くはありませんでした。

取り組み予定校での議論は難航

 

-当初取組みを予定していた学校で議論が難航-

6月、新学期始め。当初モデル校として取り組みを予定していた公立校を訪問しました。事前に校長先生からも取り組みをお願いしたい、との言葉を頂いて安心をしていたのもつかの間、教科担当の先生方からの反応は芳しくありませんでした。

 

「私たちはこれまで生徒の指導をしてきた自信もある。生徒の力を信じている。映像授業を導入することで生徒が混乱してしまうのではないかと心配なの。」

 

その学校の高校卒業試験の合格率も10-20%と、とても高いものではありません。先生たち、生徒たちの力になりたい。そう思って臨んだ協議も、彼らの想いをうまくつかむことは出来ず、一旦持ち帰りとなってしまいました。

 

-思わぬきっかけ-

「どうしたら力になれるだろう?」

 

ネガティブな反応をされてしまった高校で、どうしたら受け入れてもらえるだろう。仲間と散々議論を重ね、いくつか案をもって、教育省と面談を進めることになりました。

 

チン州教育省ではこの5月、教育省の責任者が新しい人に代わりました。前任者はプロジェクトの導入を好意的に受け止めていたけれども新任者はどうだろう・・・。

 

緊張の中臨んだ面談では、今回訪問した学校での反応や、今後の取り組み案を提示させてもらい、教育省の方々の反応を待ちます。

 

少しの沈黙。

 

「それなら、今年初めて高校卒業試験を受ける生徒が通う高校が出来たから、そこでならもっと可能性があるかもしれませんね。校長先生との打ち合わせをアレンジましょう」

 

プロジェクトがいよいよ動き始めました。

 

-ついに、公立プロジェクト校が決定!-

紹介をされた学校の校長先生、教科担当を訪ねての訪問。その学校はもともと小学校として始まり、2015年までは中学校までの教育課程しかありませんでした。しかし、去年初めて高校生が入学し、今年初めて高校卒業試験を受験する生徒が誕生するのです。

 

前年度までの高校卒業試験実績も無ければ、現在高校生を教えている先生ももともとは郊外の村で小学生、中学生向けに先生をしていた方たちばかり。受験科目全てに専任の先生がついているわけでもなく、ぼくたちが訪問した時にも英語の先生が物理の授業も教えている、という状況でした。

 

一度別の学校で断られていることもあり、少々不安を感じながらも、e-Educationプロジェクトがどう学校の、先生の、生徒の力になりたいのか。どんな形であれば協力できるのか、一方通行ではない、先生の意見を聞きながら一緒に協力の形を創っていきたいと、協議を行いました。

 

真剣な表情でこちらの話を聞いてくれた校長先生。

 

「ぜひ、一緒にやりましょう!」

 

そう言ってくれた言葉に、ガッツポーズを隠せませんでした。

 

別の公立校で協議の末、喜んで導入したいとの合意を得ることが出来ました

 

実際、プロジェクトを開始するにあたり、先生方からも要望を頂きました。

 

これまでDVDで届けていた映像授業では、学校に設置をしてあるパソコンからしか視聴が出来ない。映像授業を授業で流す前に自らの空いている時間に予習し、効果的な学習体制をつくりたい。そんな嬉しい要望に、先生たちの熱い想いに応えて携帯電話でも視聴できるようにデータを圧縮、学校以外でも、先生がいつでも好きな時に授業研究が出来る体制をつくることが出来ました!

 

今年初めに撮影・編集を終えた新しい映像授業コンテンツも携え、新たなコンテンツを導入。

より充実した学びの場を、生徒だけでなく先生に対しても提供することが出来たのです。

 

携帯でも映像授業の視聴が可能に

 

それだけではありません。映像授業を導入するにあたって、初めての先生たちでも安心して導入できるように、映像教材を導入するにあたっての教員研修も実施しました。

 

分からないことばかり、それでも一つずつチームで進める歩みに、先生たちも期待を膨らませていました。

 

プロジェクト校の先生たちへ、映像授業の活用に関しての研修を実施

 

初めての研修、期待と不安でいっぱいな先生たち

 

-ついに、チン州の公立校で初めての映像授業の導入が実現!-

 

プロジェクターやパソコン機材の搬入も終えた8月下旬、ついに、ミャンマーで一番貧しいとされるチン州の公立校で初めてとなる映像授業の導入が開始しました!

 

ついに!ハカの公立校で初めての映像授業導入へ

 

初めての映像授業に、生徒たちも真剣です

 

今年度からパイロット校として取り組んでいるこの学校では、先生たちもハカ郊外の村(村に高校はない)の出身で、小学校・中学校でしか教えたことがなく、当初話を聞いた際には高校生に授業を教えることに不安を感じている、との声がありました。

 

しかし、携帯で映像授業を見れるようにすることで授業前に教え方を学び、「もう教えることは怖くない!」と思ってくれるまで自信を持って授業に臨んでくれています。生徒は映像授業で指導法を学んだ先生の授業と、映像授業の両方を見ることで一貫した指導のもと理解を深めている様子。映像授業を見た生徒の反応は「面白い!家に帰りたくない!」とまで声があがっています。

 

この取り組みは「ミャンマーで教育機会を必要としている全ての子どもたちが教育機会を手にし、夢を実現する」という目標に向かっての、まだ小さな、でも確実な一歩を歩めたことをぼく自身も実感しています。e-Educationがこれまで取り組んできた映像授業のインパクト、可能性を、改めて強く感じた、そんな瞬間でした。

 

しかしまだまだ課題は山積みです。

10月、11月と、この新しく始まったプロジェクトが始まった学校でぼくたちが行った学力調査の結果は、かなり厳しいものでした。プロジェクト対象校において誰一人として、当時既習単元で高校卒業試験合格に必要な点数を撮れている生徒がいなかったのです。このままだと合格率は数%がやっとかもしれない…。

これまで高校で教えたことのない先生の下で学んでいる生徒たちが高校卒業試験に合格できる可能性は限りなく高い壁に阻まれていました。

そしてこの8月~11月にかけての調査でも、これまでのe-Educationの映像授業コンテンツを届けるだけではまだまだ映像授業が公立校での取り入れには不十分であることも分かってきました。提供しているコンテンツの科目不足、単元不足、映像授業の長さが通常の授業で活用するには長すぎたり、地方の子どもたちが理解をするには解説量が不足していたり。また生徒を対象としてつくられたので、時間の無い先生が教材研究を行うにはあまり整理されていない構造である、など…。ただ、それらはマイナスな発見ではなく、むしろプラスの気づきと捉えています。これまで見えていなかったe-Educationの改善点が、公立の先生や生徒と密に連携を行う事で見えてきたのです。

 

パレワでの活動は一旦中止を余儀なくされますが、ここで諦めたわけではありません。パレワと同じように、合格率が高校を卒業できる生徒が数%しかいない地域で、きちんと現地ニーズに合った教材を制作、生徒だけでなく、教師の指導力向上にもつなげ、いずれ、パレワを含むチン州全体、そしてミャンマー全土の公立学校でこのモデルを普及出来るようみなさんの温かいご支援を、想いを、「ミャンマーで確実に教育的な成果が出る」ために、活用していきたいと思っています。

 

小さなNPOが、途上国での教育支援という答えの無い問いに向かって挑むにはまだまだ時間が必要でした。この一年がむしゃらにやってきて、正直うまく行ったこと以上に今くいかないことの方がたくさんありました。

でも、ここで終わりにはしたくないんです。だからぼくたちはこれからも取り組みます!一つ一つ、出来なかった事を出来るようにすることで、確実にミャンマーの子どもたちにとって、希望溢れる社会をつくるために。

 

「最高の授業をミャンマーの果てまで届けたい」

引き続きミャンマーの子どもたちのために邁進してまいりますので、どうか応援の程、何卒宜しくお願い致します!!

 

e-Education 古波津

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